研究課題
若手研究(A)
第3の生命鎖と呼ばれる糖鎖は細胞間相互作用を媒介することにより多くの生命現象に関係している。再生医療のための細胞源として期待される多能性幹細胞表面も糖鎖で覆われているが、その構造や機能は十分には理解されていない。研究代表者らはこ多能性幹細胞の網羅的糖鎖解析の結果、多能性幹細胞に特異的に反応する新規プローブレクチン(rBC2LCN)の発見に至っている。本研究ではrBC2LCNが認識する新規未分化糖鎖マーカーの構造と機能を明らかにするとともに、糖鎖・レクチン工学を活用した再生医療に貢献する新技術を開発することを目的とする。本年度はrBC2LCNが認識する新規未分化糖鎖マーカーの構造解析を行った。その結果、iPS細胞に発現する糖タンパク質リガンドとして、ポドカリキシンを同定した。更にiPS細胞に発現するrBC2LCNの糖鎖リガンドとして、Hタイプ3含有糖鎖の構造を決定した。これらについては国際誌に発表した。またポドカリキシンのiPS細胞における機能を明らかにするために、ヒトiPS細胞へのsiRNA導入方法の最適化を行った。次に最適化した方法を用いてポドカリキシンに対するsiRNA導入法を検討した。また、rBC2LCNの結晶構造を解析するためにrBC2LCNの結晶化方法の検討を行った。更にiPS細胞表面糖鎖に関する微細構造情報を取得するために、電子顕微鏡観察を行い、重要な構造情報を得た。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定していたrBC2LCNのリガンド同定を実現するだけでなく、H26年度以降に予定していた実験計画である機能解析や結晶構造解析についても、前倒しで一定の成果を挙げた。更に、当初予定していなかった電子顕微鏡観察を行うことで、iPS細胞の構造に関する大変興味深い研究結果を得た。
rBC2LCNリガンドの発現を抑制したときにiPS細胞の未分化性における影響について調べる。またrBC2LCNの結晶構造を明らかにして、精密糖鎖認識機構を明らかにする。更に、rBC2LCNを用いた新たなiPS細胞工学技術の開発も検討する。
予定していた研究支援員の雇用の必要がなくなったため、残額が生じた。研究に必要となる物品の購入に使用する。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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