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2014 年度 実績報告書

カルボランアニオン分子を基軸とする物性・機能・反応性の開拓

研究課題

研究課題/領域番号 25713001
研究機関独立行政法人理化学研究所

研究代表者

滝田 良  独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 副チームリーダー (50452321)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードカルボランアニオン / クロスカップリング反応 / 共役
研究実績の概要

C1 カルボラン(CHB11H11-, monocarba-closo-dodecaborate)は 1 個の炭素と11 個のホウ素からなる、高い対称性・剛直性を有するアニオン性分子です。このC1カルボランについては様々なユニークな特徴を持つ一方、その修飾化反応が極めて乏しいことから、機能創出・機能性分子創製などの応用例は非常に限られていた。そこで、昨年度までに引き続き、修飾化反応について検討を行いました。
その結果、さらに多様な C1 カルボラン誘導体構築のため、1) 12 位ホウ素頂点への芳香環導入を実現する根岸型クロスカップリング反応、2) C1 カルボラン同士が直結した新規ジアニオンを与える酸化的炭素頂点ホモカップリング反応、などを達成しました。また、3) 1位炭素頂点クロスカップリング反応について、鍵となるトランスメタル化段階を計算化学を駆使して精査しました。これをもとに、C1カルボランアニオンのリチウム試薬を用いる新たなクロスカップリング反応を開発しました。元素の特性を活かした新たな反応性を見出しただけでなく、操作性にも優れた新たな反応の開発に至りました。
また物性についても検討を行っており、様々な置換基を持つアリール化C1カルボランアニオン誘導体において、12 位ホウ素頂点上のヨウ素化反応の反応性が芳香環上の置換基により変化することを発見しました。さらなる詳細な検討により、π芳香環上の置換基の効果がσ芳香族性を持つC1カルボランの骨格を経由して伝わる「共役」とも言える電子的相関があることが明らかになりつつあります。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究が対象とする C1 カルボランアニオンは、何より修飾法が乏しいため、宝庫とも言える秘めたる機能を存分に活用できていないのが現状です。今年度も引き続き修飾化反応を検討することにより、幾つかの反応開発ができました。特に12位ホウ素頂点へも芳香環導入が可能となり、ジアリール化C1カルボランアニオン誘導体も含めて合成が可能となっています。
またC1カルボランアニオンのσ芳香属性とπ芳香環との電子相関について、12 位ホウ素頂点上のヨウ素化反応の解析により、明らかになりつつあります。これまでそのような検討は全くされておらず、新物性を見出しつつあると言えます。

今後の研究の推進方策

見出しつつあるC1カルボランアニオンのσ芳香属性とπ芳香環との電子相関についてさらに詳細を明らかにしていきます。実験科学的手法のみならず、理論計算も駆使して、その物性の詳細を明らかにします。また、それを基に新たな共役系の構築、C1カルボランアニオンを置換基として持つフタロシアニン等の色素の合成、共役系高分子への導入などを検討します。
また、銅を用いたクロスカップリング反応の反応機構の詳細について理論計算を用いて明らかにしていく予定です。その詳細が明らかになれば、C1カルボランアニオンのみならず、他のかさ高い基質等へも応用可能であり、さらなる物質科学へと展開できると考えられます。

次年度使用額が生じた理由

カルボランアニオンは高価であるため、回収・再精製などを徹底したため、昨年度は大量に購入することをしなかった。

次年度使用額の使用計画

カルボランアニオン誘導体分の機能解明のために必要な、カルボランアニオン(輸入)をはじめとする試薬類(有機試薬、金属試薬、有機溶媒)およびガラス器具類などの購入。研究打ち合わせ、国内・国際学会における成果発表などのための旅費・参加費。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 3件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] trans-Diborylation of Alkynes: pseudo-Intramolecular Strategy Utilizing Propargylic Alcohol Unit2014

    • 著者名/発表者名
      Yuki Nagashima, Keiichi Hirano, Ryo Takita, and Masanobu Uchiyama
    • 雑誌名

      Journal of the American Chemical Society

      巻: 136 ページ: 8532-8535

    • DOI

      10.1021/ja5036754

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Diastereoselective deprotonative metalation of chiral ferrocene derived acetals and esters using mixed lithiumecadmium and lithiumezinc combinations2014

    • 著者名/発表者名
      Gandrath Dayaker, Aare Sreeshailam, D. Venkata Ramana, Floris Chevallier, Thierry Roisnel, Shinsuke Komagawa, Ryo Takita, Masanobu Uchiyama, Palakodety Radha Krishna, and Florence Mongin
    • 雑誌名

      Tetrahedron

      巻: 60 ページ: 2102-2117

    • DOI

      0.1016/j.tet.2014.02.010

    • 査読あり
  • [雑誌論文] New avenues in the directed deprotometallation of aromatics: recent advances in directed cupration2014

    • 著者名/発表者名
      Philip J. Harford, Andrew J. Peel, Floris Chevallier, Ryo Takita, Florence Mongin, Masanobu Uchiyama, and Andrew E. H. Wheatley
    • 雑誌名

      Dalton Transactions

      巻: 43 ページ: 14181-14203

    • DOI

      10.1039/C4DT01130A

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] カルボランアニオンの炭素頂点におけるクロスカップリング反応の開発と機能創出2014

    • 著者名/発表者名
      金澤純一朗、滝田 良、内山真伸
    • 雑誌名

      薬学雑誌

      巻: 134 ページ: 783-788

    • DOI

      10.1248/yakushi.14-00017-1

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 内皮細胞のパールカンの発現を誘導する有機アンチモン化合物の設計・合成・機能解析と構造活性相関研究2014

    • 著者名/発表者名
      中裕之、滝田 良、鍛冶利幸、内山真伸
    • 雑誌名

      薬学雑誌

      巻: 134 ページ: 789-791

    • DOI

      10.1248/yakushi.14-00017-2

    • オープンアクセス
  • [学会発表] カルボランアニオンを基盤としたリチウムカチオン超活性化と特異な反応性2015

    • 著者名/発表者名
      北沢 裕, 滝田 良 , 松原 誠二郎, 内山 真伸
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会
    • 発表場所
      千葉県、日本大学
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-29
  • [学会発表] C1-カルボランアニオンへの芳香環導入とその物性2015

    • 著者名/発表者名
      大塚 麻衣,金澤 純一朗,滝田 良,内山 真伸
    • 学会等名
      日本薬学会第135年会
    • 発表場所
      兵庫県神戸市、神戸学院大学/兵庫医療大学
    • 年月日
      2015-03-25 – 2015-03-28
  • [学会発表] 銅アート錯体を用いた芳香環への位置/化学選択的な水酸基およびアミノ基導入反応の開発2015

    • 著者名/発表者名
      下條 弘平,平野 圭一,滝田 良,内山 真伸
    • 学会等名
      日本薬学会第135年会
    • 発表場所
      兵庫県神戸市、神戸学院大学/兵庫医療大学
    • 年月日
      2015-03-25 – 2015-03-28
  • [学会発表] 亜鉛錯体の光学特性を利用したタンパク質破壊法の開発2015

    • 著者名/発表者名
      佐藤 玄,大井 未来,今堀 龍志,滝田 良,吉田 健吾,石川 稔,橋本 祐一,村中 厚哉,内山 真伸
    • 学会等名
      日本薬学会第135年会
    • 発表場所
      兵庫県神戸市、神戸学院大学/兵庫医療大学
    • 年月日
      2015-03-25 – 2015-03-28
  • [学会発表] πおよびσ共役結合に対する新反応開発と機能創出2015

    • 著者名/発表者名
      滝田 良
    • 学会等名
      日本薬学会第135年会
    • 発表場所
      兵庫県神戸市、神戸学院大学/兵庫医療大学
    • 年月日
      2015-03-25 – 2015-03-28
    • 招待講演
  • [学会発表] 元素の特性を活かした新反応開発と機能創出2015

    • 著者名/発表者名
      滝田 良
    • 学会等名
      千葉大学大学院薬学研究院 第7回化学系若手研究者講演会
    • 発表場所
      千葉県、千葉大学
    • 年月日
      2015-01-23
    • 招待講演
  • [学会発表] ボリルアニオン等価体の設計と新反応開発―ボリル亜鉛アート錯体によるホウ素化反応と擬分子内trans-ジボリル化反応―2014

    • 著者名/発表者名
      滝田 良, 永島佑貴, 平野圭一, 内山 真伸
    • 学会等名
      第106回有機合成シンポジウム
    • 発表場所
      東京都、早稲田大学
    • 年月日
      2014-11-06 – 2014-11-07
  • [学会発表] カルボランアニオンのクロスカップリング反応の開発と機能創出2014

    • 著者名/発表者名
      滝田 良, 大塚麻衣, 金澤純一朗, 内山 真伸
    • 学会等名
      第61回有機金属化学討論会
    • 発表場所
      福岡県福岡市、九州大学
    • 年月日
      2014-09-23 – 2014-09-25
  • [学会発表] Cross-coupling Reaction of Monocarba-closo-dodecaborate for Functional Molecules2014

    • 著者名/発表者名
      大塚麻衣, 金澤純一朗, 滝田 良, 内山真伸
    • 学会等名
      NIMS Conference 2014 –A Strong Future from Soft Materials–
    • 発表場所
      茨城県つくば市、物質・材料研究機構
    • 年月日
      2014-07-01 – 2014-07-03
  • [学会発表] 元素の特性を活かした反応開発と機能性分子創製2014

    • 著者名/発表者名
      滝田 良
    • 学会等名
      理研シンポジウム:第9回有機合成化学のフロンティア
    • 発表場所
      埼玉県和光市 理化学研究所
    • 年月日
      2014-06-27
    • 招待講演
  • [備考] 理化学研究所 環境資源科学研究センター 先進機能元素化学研究チーム/内山元素化学研究室

    • URL

      http://www.riken.jp/genso_kagaku/index.html

  • [備考] 東京大学大学院薬学系研究科 基礎有機化学教室

    • URL

      http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~kisoyuki/index.html

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公開日: 2016-06-01  

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