研究課題/領域番号 |
25713002
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
熊谷 直哉 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 主席研究員 (40431887)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 不斉合成 / 不斉触媒 / 原子効率 / 医薬品合成 / 協奏機能型触媒 |
研究概要 |
ソフトLewis酸(soft LA)/ハードBronsted塩基(hard BB)型不斉触媒を基盤に、種々のソフトLewis塩基性基質の特異的活性化機構を鍵とする、原子効率100%の不斉C-C結合形成反応の新規探索を各種行った。ソフトLewis塩基性求電子剤としてN-チオフォスフィノイルケチミンを用いることで、これまで成功例が非常に限られていた亜リン酸エステルあるいはブチロラクトンのダイレクト型付加反応が効率良く進行する事を見いだした。特に前者の反応は、医薬化学において重要な光学活性α,α-2置換α-アミノホスホン酸の最も効率的な不斉合成法を提供するため、現在市販化に向けた検討を行っている。また、soft LA/hard BB触媒として新たなAg/Li触媒系の同定に至った。本触媒はこれまで困難であったアミドのダイレクト型触媒的不斉アルドール反応を可能にし、協奏機能型触媒の特異な触媒活性を発現することができた。これらの反応は全てsoft LA/hard BB協奏機能型不斉触媒のみが促進できる反応で、原子効率100%の不斉C-C結合形成反応である点も特筆に値する。一方、アミド配位子/希土類金属型触媒においては、Nd/Na/アミド型配位子触媒において大幅な改善が見られた。カーボンナノチューブの網目構造中で自己組織化する本触媒の利点を生かし、平均80-90%の触媒担持率を可能にする新規調製法を開発した。本不均一触媒は回収再利用が可能で、現在連続フロー合成への応用を行っている。共有結合を用いない簡便な触媒調製法は実用性が高く、本方法論の一般化も検討している。これら原子効率100%の不斉触媒反応を応用し、抗結核作用を有するマクロラクトン型天然物thuggacin Bの不斉全合成を達成した。4つの不斉炭素を独自の不斉触媒で効率しており、協奏機能型不斉触媒反応の実用性を端的に示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新規不斉触媒反応として6反応の開発・論文発表とマクロラクトン型天然物thuggacin Bの不斉全合成・論文発表を果たした。また開発済みの反応においても大幅な改善を果たし、論文発表している。当初の予定を上回るペースで研究の進展が見られていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ソフトLewis酸(soft LA)/ハードBronsted塩基(hard BB)型不斉触媒、アミド配位子/希土類金属型触媒については、前年度に引き続き反応開発を進める。また、新たな協奏機能型触媒系として、新規NHC/hard LA/水素結合 協奏機能型触媒の開発に着手する。申請者は既に希土類金属(hardLA)/アミド配位子型触媒による数多くの原子効率100%の不斉反応開発に成功している。本触媒の広い適応性は、その柔軟なアミド配位子骨格が水素結合を介して誘導適合型に種々の反応遷移状態に適応する事に起因する。本触媒系にNHC部位を導入し、新たな3機能発現型協奏触媒を創製する。第一選択として、成功例のないケトンへの触媒的不斉ベンゾイン縮合反応を志向し、アルデヒドの求核的活性化(NHC)/ケトンの求電子的活性化(hard LA)を不斉環境下の近傍にて実現(水素結合制御)させる触媒系を提案する。NHCの①マルチな触媒活性及び②NHC-遷移金属触媒形成により、本3機能発現型協奏触媒は多様なC-C結合形成反応への適用が見込める。
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