研究実績の概要 |
本研究計画は新規協奏機能型不斉触媒の創製を基盤として、原子効率100%の触媒的不斉炭素-炭素結合形成反応の開発を目指すものである。複数の触媒機能の同時発現を起源とする特定官能基の強力な活性化機構を駆使し、有機合成に汎用される低反応性基質の直接活性化を可能にする触媒反応群を開発し、必然的に廃棄物を副生する試薬依存型有機合成反応からの脱却を図る。協奏機能型不斉触媒の設計指針を一般化して触媒化学的基礎研究を追求し、次世代の環境調和型有機合成の基本根幹技術としての確立を視野に入れている。 平成27年度は、アミドエノラートの触媒的な直接生成を基盤とする環境調和型不斉炭素-炭素結合形成反応を中心に研究展開を行った。アミドはα位酸性度が低く、従来エノラート形成には化学両論量の強塩基の使用が必須であった。我々は、ソフトLewis酸/ハードブレンステッド塩基協奏機能型触媒による特異的活性化機構が作用する7-アザインドリンアミドがα-スルファニル,α-アジド,α-トリフルオロメチル型アミドの触媒的エノラート化、それに続く不斉アルドール反応、マンニッヒ型反応が高立体選択的に進行することを見出している。特にフッ素含有アミドに関しては、本反応系は脱フッ素化を効果的に抑えた活性化を可能にする強力かつ類い希な触媒的エノラート化方法論であり、昨今のフッ素含有キラルビルディングブロックの医薬化学分野における需要を鑑み、様々なフッ素置換官能基含有7-アザインドリンアミドを利用する反応を幅広く展開した。さらに、より酸性度が低いα-アルキル型アミドの触媒的エノラート化を可能にする触媒系の同定にも成功し、種々のα官能基をデリバーするアミドエノラート求核剤が確立されつつある。一方、7-アザインドリンアミドは求核的活性化のみならず、不飽和アミドとして求電子的活性化による触媒的不斉共役付加反応にも寄与することを見出した。
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