研究実績の概要 |
現在、幹細胞をはじめとした細胞の機能制御や分化誘導方法として、遺伝子工学技術や薬剤添加による方法などが行われている。細胞自身が有する生理機能や分化能を非侵襲的に制御することは、疾病の治療・予防にとどまらず、基礎生物医学実験などにも有用な制御ツールとなる。そこで、細胞機能や分化誘導を制御する方法として光技術を応用することが本研究の目的である。本研究提案は遺伝子組み換えや毒性または副作用を発現する薬剤を利用しない革新的な方法である。 本研究期間では、骨髄間葉系幹細胞の骨芽細胞分化を促進させた研究成果を公表した(Scientific Reports, 5, 13114 (2015))。骨髄間葉系幹細胞は再生医療に用いる細胞源として有望であるが、患者さんから採取後、細胞の増殖と分化に時間を要し、患者さんの待機期間が長期化していることが課題となっている。本研究で使用した分化促進方法に用いた光感受性薬物は生体親和性が高く、細胞毒性はほとんど見られなかった。また、光技術とこの薬物を用いて骨髄間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化過程を詳細に研究した結果、Activator Protein-1(AP-1)という転写因子が骨芽細胞分化に必須であることを明らかにした。本研究成果は、幹細胞生物学に新しい方法論を提案できたと考えている。
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