研究課題/領域番号 |
25713016
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡田 由紀 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 准教授 (60546430)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エピドラッグ / スクリーニング / ヒストンメチル化 / 白血病 |
研究実績の概要 |
現在のエピドラッグは標的分子の酵素活性阻害を目的としたものが主体であるが、それら分子の多くは生命維持に不可欠であることから副作用が懸念される。本研究ではMLL融合白血病の発症がヒストンメチル化酵素DOT1LとMLL融合蛋白質との結合に依存することに着目し、この結合を阻害する低分子化合物の同定を目的とした。 DOT1Lと相互作用するMLL融合蛋白には複数存在し、DOT1Lとの結合ドメインが不明な分子が多い。DOT1Lとの結合ドメインが既知の分子であっても、結合ドメインがその分子本来の機能に必須であれば、そこに結合する化合物はその機能を阻害することから、本来の目的である「副作用の軽減」を満たさない可能性がある。そこで標的分子および標的ドメインを慎重に検討していた一方で、スクリーニングの陽性コントロールとして実施したDOT1L酵素活性阻害剤の方で陽性ヒットが得られた。さらに、既報のDOT1L酵素活性阻害剤が一部の非MLL白血病にも有効であると報告され、白血病治療に対してより普遍的な効果が期待されたことから、この新規に得られたDOT1L阻害剤(DOT1Li_#2)の評価を並行して継続することとした。 DOT1Li_#2の阻害効果をin vitroで確認した後に、細胞株に添加したときの効果を確認する実験を行った。細胞株には、MLL融合蛋白依存性白血病細胞株(THP-1、U937)と非依存性白血病細胞株(K562、HL60)それぞれ2種類を用い、それらにおけるヒストンメチル化阻害の程度を検討した。その結果、DOT1Li_#2はMLL融合蛋白依存性白血病細胞株で顕著なメチル化阻害を呈した。しかしDOT1Li_#2添加時に軽度の沈殿物が認められたことから、DOT1Li_#2の水溶性向上のために改変体の作製が必要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
スクリーンングで得られた候補化合物が培地に難溶性を示したことから、予定していた細胞株の実験をさらに進めるためには、水溶性を改善する改変を施す必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
当初はDOT1Lと相互作用するMLL融合蛋白の結合阻害剤と、DOT1Lの酵素活性阻害剤(どちらも環状ペプチド)を並行して推し進める予定であったが、後者の難溶性改善のために時間を要していいること、さらに文献的に後者のより普遍的な有用性が高まったことから、残りの期間は後者の評価に専念することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗が遅れたため、予定通りに進捗していた場合に購入を予定していた試薬や消耗品の購入を見送った。
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次年度使用額の使用計画 |
今後の進捗に応じて試薬や消耗品を購入する。実験補助員を来年度も雇用する。
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