研究課題
高度に進化を遂げた多剤耐性菌のモデルとしてアシネトバクター・バウマニ(Ab: Acinetobacter baumannii)に注目し、国内医療機関から収集した152株のゲノム解析を行った。さらに公共データベース (PATRIC) から海外医療機関由来の150株のゲノム配列を加え、計302株を用いた大規模な比較ゲノム解析を行った。Ab流行株 ST2株の完全ゲノム配列をリファレンスに用いたBLASTatlas解析から、Ab流行株ST2株に特異的に存在するDNA領域にVI型分泌機構(T6SS)依存的に分泌する抗菌エフェクターTseXとその抗菌活性を阻害する免疫タンパク質TsiXをコードする遺伝子対を発見した。SNPを用いた系統樹解析から、Ab ST2株は複数のcladeに細分類可能で、tseXとtsiX遺伝子のオペロンがコードされたDNA領域はclade毎で多様性があり、個々のエフェクターは異なる抗菌活性を有していることが明らかとなった。また、国内医療機関または農場から分離された緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)40株とGenBankに登録された緑膿菌の海外臨床分離株について比較ゲノム解析を行い、T6SS抗菌エフェクターTse1とその免疫タンパク質Tsi1はほとんど全ての菌株に保存されていることを確認した。そのため、Tse1-Tsi1複合体は緑膿菌に対する抗菌薬開発のよい標的と考えられ、in silicoスクリーニングを経て、阻害化合物候補を同定した。さらに緑膿菌流行株ST235株に特異的に存在するDNA領域に新規のT6SSエフェクター候補遺伝子を発見した。BLASTによるホモロジー解析では、同遺伝子は緑膿菌流行株でのみ存在することから、流行株の迅速な診断法にも応用可能であり、ST235株を標的とした抗菌薬開発ではよい標的となることが予想された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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