研究実績の概要 |
申請者らはこれまでに、生体内でのinflammasomeの活性化が、インフルエンザウイルス特異的な免疫応答の誘導に必要であること (J Exp Med. 2009, Nat Immunol. 2013)、ある種の腸内細菌がインフルエンザウイルス特異的な免疫応答の誘導に必要であること(Proc Natl Acad Sci U S A. 2011)を明らかにしてきた。これらのことから、ウイルス感染によるNLRP3 inflammasomeの活性化メカニズムと腸内細菌によるウイルス特異的な免疫応答の制御機構を理解することは、効果的なワクチン開発に役立つと期待される。本年度は、インフルエンザウイルスのNS1タンパク質がNLRP3と相互作用することにより、NLRP3 inflammasomeの活性化とIL-1betaの産生を抑制していることを明らかにした(J Virol. 2016)。NS1タンパク質によるIL-1betaの抑制には、RNA結合ドメイン(38番目と41番目の塩基性アミノ酸)とTRIM25結合ドメイン(96番目と97番目の酸性アミノ酸)が重要であったことから、NS1タンパク質はウイルスRNAによるNLRP3 inflammasomeの増幅経路にも影響を与えていることが分かった。またin vivoの実験により、4種類の抗生物質(アンピシリン、ネオマイシン、メトロニダゾール、バンコマイシン)を飲ませたマウスは、通常の水を飲んでいるマウスよりもインフルエンザウイルス感染に対する感受性が増すことを明らかにした。さらに次世代シークエンサーを用いた解析により、4種類の抗生物質を飲ませたマウスの腸内には、ある種の腸内細菌の割合が増加していることを見出した。
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