現在、エクソソームの精製には超遠心法やPEG沈殿法などが主に用いられているが、これらの精製法で得られたエクソソームには多くの不純物が含まれている。また超遠心法は操作が煩雑である為、回収量が不安定で定量的な解析が行えない上に、高額な超遠心機が必要である為、多検体の解析が行えないなどの問題点が存在する。このような状況では、エクソソーム研究を進展させるのは困難であり、エクソソームを簡易に高純度で精製する技術の開発が期待されている。これまでの研究により我々は、Tim4という膜蛋白質が標的細胞におけるエクソソームの特異的な受容体であることを見出した。Tim4を発現した細胞はTim4の細胞外領域にあるIgVドメインを介して、エクソソーム膜表面に存在するリン脂質ホスファチジルセリン(PS)とカルシウムイオン依存的に強く結合し、エクソソームを細胞内へと取り込む。そこで我々は、Tim4の細胞外領域と磁気ビーズとを結合させた「Tim4磁気ビーズ」を作製した。Tim4はエクソソーム膜表面のPSとカルシウムイオン依存的に結合することから、キレート剤であるEDTAを含む溶出バッファーを用いることで遊離させ、高純度なエクソソームを効率よく精製することが可能である。実際、Tim4磁気ビーズ法を用いて、ヒト白血病細胞から放出されたエクソソームを精製し、その純度を超遠心法やPEG沈殿法により精製したエクソソームと比較したところ、Tim4磁気ビーズ法は他の方法に比べ10~100倍以上に高純度なエクソソームを再現性よく回収できることが明らかとなった。その結果、これまで同定することができなかったエクソソーム上の蛋白質やRNAを数多く同定することが可能となった。以上の結果から、Tim4磁気ビーズ法の有用性が示され、エクソソームを簡易かつ高純度に精製する方法の開発に成功した。
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