研究実績の概要 |
肝臓、腎臓検体測定によるデータ拡充:昨年度に引き続き、肝臓と腎臓の非がん部およびがん部検体のマススペクトルデータ収集とデータベース構築を行った。最終的に腎臓18,231スペクトル(1,823切片)、肝臓12,391スペクトル(1,093切片)からなるデータベースを構築するこができた。これを学習機械に学習させ交差検証を行った結果、病理医による診断との一致率が肝臓において97.4%、腎臓において95.3%と目標を達成した。 多種類のがんへの応用:肝臓がん、腎臓がんに加えて胃粘膜がん、大腸粘膜がん、口腔粘膜がん、膵臓がん、リンパ節転移の検体を測定し、マススペクトルデータを収集した。消化器粘膜に関しては既に1,400切片以上の測定が完了しており、がん診断アルゴリズムの構築を進めている。 データ管理/統計解析ソフトウェア開発:膨大なマススペクトルデータを管理、編集し、さらに統計解析と結果の提示が可能なソフトウェアの開発がほぼ完了した。 イオン化、質量分析システムの改良:サンプルプレート、探針を規格化することでイオン検出、マススペクトル取得の簡便性と再現性を向上させた。これにより多数検体の測定とデータベース構築のスループットが向上する。また手術場でのオンサイト利用を目指し、人体に直接使用可能なシステムに改良することを試みていたがその試作機が完成し、生きたマウスから薬剤動態や薬剤投与による代謝産物の変化をリアルタイムに検出することに成功した。同システムを用いれば術中のリンパ節転移の迅速診断をオンサイトで行うことが可能となる。
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