研究課題
質量顕微鏡法は、組織切片中に存在する代謝物などの分布情報を可視化することのできる手法である。本手法によってこれまでの病理検査では明らかにできなかった分子の位置情報などを可視化することが可能になった。しかしながら、病態検査学の分野における本手法の応用の歴史は浅く、検討すべき項目が多く残されている。当該年度は計画最終年度として、病態検査における質量顕微鏡法の汎用性をさらに広げるために、質量顕微鏡法で得られたデータと生物学実験で得られるデータを統合的に解析し、質量顕微鏡で得られるデータに病理学的な解釈を与えることを目的とした。これまで様々な疾患組織を分析する中で、腹部大動脈瘤の患者血管組織において、疾患部位特異的に強く検出されるピークがあることを見出し、これが中性脂肪(TG)であると同定した。この中性脂肪の病理学的意味を明らかにすることを目的として、組織の病理解析を行った結果、中性脂肪のピークが検出されるのは、血管組織に脂肪細胞が異常出現していることが原因であることを明らかにした。さらに血管組織における脂肪細胞の異常出現は腹部大動脈瘤の破裂の原因となりうることを本研究によって明らかにした。血管壁脂肪細胞の出現数は腹部大動脈瘤径と相関しており、血管壁の脂肪細胞が破裂危険度を予見するマーカーとなりうる可能性が示された。血管壁の脂肪細胞数を非侵襲的に評価する手法の確立が望まれる。また、これまでの研究によって得られた成果を総説として2報の論文で公表した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件)
Scientific Reports
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