研究課題
若手研究(A)
本研究では、バクテリアDNAと同様の特徴である非メチル化CpGモチーフを有するミトコンドリアDNAが不全心筋細胞に蓄積され、自然免疫に関わるToll様受容体であるTLR9を介してサイトカイン産生や炎症細胞浸潤に寄与している点に着目し、TLR9およびDNaseIIの心不全治療新規創薬分子標的としての可能性についての検討を行うものである。圧負荷モデル以外の心筋症モデルとして心筋梗塞後心不全モデルマウスを解析した。その結果、心筋梗塞後の急性期においては圧負荷と同様に、DNaseII活性が心臓において上昇することが明らかとなった。さらに慢性期の心不全発症後においては、圧負荷と同様に急性期と比し、DNaseII活性低下が認められた。本機構について初代培養心筋細胞を用いた検討を行った。その結果、脱共役剤CCCPによるミトコンドリア障害により、DNaseII活性が低下することが明らかとなった。In vivo解析を行うために、αMHCプロモーターを用いた心筋特異的DNase II過剰発現マウスのコンストラクトを作製し、トランスジェニックマウス作出に成功した。本遺伝子改変マウス心においてDNase II-HA蛋白質の発現がウエスタンブロット法にて確認された。さらに対照群である非遺伝子改変マウス心抽出蛋白液と比し、酸性条件下でのサケ精子DNAの分解が著明に亢進しており、心臓におけるDNase II活性の上昇が確認された。TLR9阻害薬については、炎症反応抑制効果持続時間に関しての予備的検討を行った。炎症反応惹起刺激としては、D-Galactosamine投与後にCpG ODN投与を行った。その結果、CpG oligo投与によるサイトカイン血中濃度上昇は、CpG oligo投与48時間前のTLR9阻害薬投与によって十分に抑制されることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
心筋特異的DNaseII発現遺伝子改変マウスの樹立に成功しており、蓄積したミトコンドリアDNA分解の促進が心不全発症を改善しうるかどうかについての検討が実施可能な状況である。また、TLR9阻害薬による心不全進行抑制効果についても、既に阻害薬の投与量、頻度及び投与方法に関しての予備実験が進んでおり、TLR9経路阻害による心不全治療効果についての検討を遂行可能である。
現段階で、TLR9阻害剤による心筋細胞における炎症反応抑制効果が確認された。またin vivoにおいては本研究によって、経口投与後少なくとも48時間にわたって十分なTLR9阻害効果が得られることが判明した。今後は圧負荷心不全モデルなどの動物疾患モデルにおける反復投与により、心不全病態の抑制に関する検討を行う。mtDNA分解に寄与するDNase IIの活性調節についての一端が明らかとなった。本研究ではDNase IIの発現上昇がミトコンドリアオートファジーの完遂に作用し、心不全発症進展を抑制しうるとの仮説に基づき、遺伝子改変マウスの作製を行った。その結果心筋特異的DNase II発現マウスの樹立に成功した。今後、本遺伝子改変マウスに心不全病態モデルを作製することで、DNase II過剰発現による心不全救済効果についての評価を行う。
研究の効率化により本年度の使用額が圧縮された。その結果次年度に更なる実験の遂行が可能になったため。本年度に作成した遺伝子改変動物に対する圧負荷モデル、およびTLR9阻害剤投与後の経過観察について、より詳細な経時的観察を行うために用いる。
すべて 2013
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Biochem Biophys Res Commun.
巻: 441 ページ: 787-792
10.1016/j.bbrc.2013.10.135.