研究課題/領域番号 |
25713033
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
久米 真司 滋賀医科大学, 医学部, 特任助教 (00452235)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腎臓 / 飢餓 / オートファジー / NAD代謝 / 糖尿病性腎症 |
研究実績の概要 |
1)糖尿病性腎症における糸球体上皮細胞障害におけるmTORC1シグナルの役割を検討した結果、糖尿病状態で亢進するmTORC1シグナルは上皮細胞アポトーシスを惹起し、ポドサイト数の減少に起因した蛋白尿発症に関与することが明かとなった。さらに脂肪酸によるmTORC1の過剰活性化にはmTORC1の細胞質からリソソーム膜上への移動亢進が関与しているという新たな知見を得ることができた。(BBA 2014に掲載) 2)糖尿病性腎症の発症進展における糸球体上皮細胞オートファジーの役割を検討した結果、糸球体上皮細胞オートファジーは早期腎症の発症ではなく、ネフローゼ症候群のような進行性病態に大きく関与する可能性が示された。(論文投稿中) 3)NAD関連酵素群と腎症発症との関連を検討した結果、腎症保護酵素として新規にNNMTを同定した。またその代謝産物である1-MNAにも腎保護効果があることが示された。(論文投稿中) 4)糖尿病状態において、近位尿細管細胞における低酸素、脂肪酸刺激、高糖濃度刺激は過剰なmTORC1活性化を引き起こし細胞死を誘導することが明かとなった。また、そのmTORC1に依存した細胞死を抑制しうるmiRNAの存在を同定することに成功した。 5)近位尿細管細胞オートファジー欠損マウスを使用した検討から、腎臓には飢餓時にケトン産生をを行う脳力が潜在的に備わっていること、その過程にオートファジー機構が必須であることを明かとした。(論文作成中。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた実験計画通りに研究は進捗し、その成果は論文にまとめられている。
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今後の研究の推進方策 |
1)腎(近位尿細管細胞)内飢餓応答をメタボローム、cDNA microarrayを用い網羅的に検討する。肝特異的オートファジー欠損マウスの腎臓が、肝臓での飢餓応答不全に対し、代償性の飢餓応答の亢進を示したことから、このマウスが元来腎臓が有する潜在的な飢餓応答機構の解析に適したモデルの一つとなる。そこで、各臓器特異的オートファジー(Atg5)欠損マウスに対し絶食負荷を行った後に、各マウス群より腎検体を採取する。これら腎検体を用い、メタボローム解析を行い、飢餓応答に対する腎内代謝変化を網羅的に解析する。この結果は、これまで検出されなかった、腎臓が有する潜在的な飢餓応答機構や腎栄養代謝学の基礎データとなる。 2) 腎栄養関連シグナルに関わる遺伝子の遺伝子改変マウスを作製する。現在明らかとされている栄養感知シグナルは主にAMPK、Sirtuins、mTORC1であり、これらシグナルの腎での生理機能解析から着手する。一般的に、飢餓によりAMPKとSirtuinsは活性化され、mTORC1は抑制される。そこで、腎におけるAMPKとSirtuinsの発現抑制、mTORC1の恒常的活性化が飢餓応答機構に及ぼす影響を検討し、腎栄養感知シグナルの生理的役割を解明する。AMPKαの Floxマウス、ならびに、Sirt1ならびにSirt3のFloxマウスを作製する。mTORC1はTSC1蛋白によりその酵素活性が負に制御されている。よって、TSC1遺伝子欠損により、mTORC1の恒常的活性化を得ることができる。肝特異的遺伝子欠損にはalbumin promoterを使用する。肝特異的遺伝子欠損の表現系解析に引き続き、同一個体で肝腎でのダブル遺伝子欠損が飢餓応答に及ぼす影響を検討するため、後天的にCreを発現する薬剤誘導性近位尿細管特異的Creマウスを使用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度末に予定していた研究内容の一部に遅延が生じたため、使用予定であった一部の予算を使用できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
予定していた研究内容は現在進行中であり、H26年度に使用予定であった予算はH26年度内に実施するはずであった研究実施のための予算として、平成27年度予算とともに使用する。
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