研究課題
①ヒト腎生検サンプルを用い、腎症におけるポドサイトでのオートファジー活性を検討するとともに、遺伝子改変マウスを用い、腎症発症機構におけるオートファジーの役割を検討した。ヒト腎生検組織の検討では、糖尿病を伴う高度蛋白尿症例において、ポドサイトでのオートファジー活性の低下が確認された。更に、高脂肪食負荷により肥満2型糖尿病を誘発した状態において、ポドサイト特異的オートファジー欠損マウスは、対照マウスに比し有意なポドサイト数の減少ならびに足突起の消失を伴う蛋白尿の顕著な増加、引き続く尿細管間質病変の悪化を認めた。これらの結果は、ポドサイトにおけるオートファジーは糖尿病状態における同細胞の恒常性維持に不可欠な機構であり、その破綻が高度蛋白尿の原因となりうることを明らかとした。②近位尿細管特異的オートファジー欠損マウスを用いた検討により、近位尿細管細胞における飢餓誘導性オートファジーは哺乳類における飢餓時のケトン産生に不可欠であることが明らかとなった。③NAD代謝関連酵素と腎障害の関連を検討した結果、NAD代謝関連酵素の一つであるNNMTには酸化ストレスの軽減を介した細胞保護的な役割があることが明らかとなった。④近位尿細管細胞における低酸素刺激に対する細胞内mTORC1シグナルの役割を検討した結果、糖尿病状態で過剰に活性化するmTORC1は細胞の低酸素応答を破綻させ細胞死をもたらすことが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本年度予定した遺伝子改変マウスの作製ならびに表現系の解析は順調に進み論文公表に至った。また、新たな仮説のもと実施している研究内容も順調に実験が遂行され論文投稿中にある。
①腎(近位尿細管細胞)内飢餓応答をメタボローム、cDNA microarrayを用い網羅的に検討する。肝特異的オートファジー欠損マウスの腎臓が、肝臓での飢餓応答不全に対し、代償性の飢餓応答の亢進(腎での糖新生、ケトン産生の亢進)を示したことから、このマウスが元来腎臓が有する潜在的な飢餓応答機構の解析に適したモデルの一つとなる。そこで、各臓器特異的オートファジー(Atg5)欠損マウスに対し絶食負荷を行った後に、各マウス群より腎検体を採取する(図5)。これら腎検体を用い、メタボローム解析、ならびにLaser-capture microdissectionによる近位尿細管細胞検体採取後に作製したcDNAを用いた遺伝子発現解析(cDNA microarray)を行い、飢餓応答に対する腎内代謝変化を網羅的に解析する。この結果は、これまで検出されなかった、腎臓が有する潜在的な飢餓応答機構や腎栄養代謝学の基礎データとなる。②腎臓におkるケトン産生が生体にとってどのような意味を持つのか、現在の疾患の病態や治療にどのように関わるのかをさらに検討する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 1件、 招待講演 8件) 図書 (2件)
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