研究実績の概要 |
ハンチントン病や筋強直性ジストロフィーなどのトリプレットリピート病では、CAGやCTGといった3塩基繰り返し配列(リピート)が異常に伸長しており、そのリピート長は症状の重症度と比例する。これらトリプレットリピート病患者では、年齢とともにリピート長がさらに伸長することにより、症状が進行するとされる。本研究では、こうした症状進行の原因となるリピート伸長機構を解明し、その制御を可能にすることでトリプレットリピート病の治療を目指している。今年度は、筋強直性ジストロフィー患者由来iPS細胞を用い、骨格筋や心筋、および神経細胞へ分化誘導することで、リピートの伸長機序を解明した。前年度までに同定した、異常伸長リピートの短縮を誘導する低分子化合物を投与することにより、ハンチントン病患者由来細胞で異常伸長リピートの短縮効果を実証した。こうしたリピート短縮効果は、異常伸長リピートに特異的であり、遺伝子の各所に存在する通常の長さのリピートには変化を及ぼさないことも確認した。さらに、in vitroでのbinding assay, repair assayなどにより、リピート短縮にかかわるDNA修復蛋白を同定した。またすでに、こうした低分子化合物の動物モデルへの投与も開始しており、順調に治療効果の解析も進んでいる。本年度の研究実績から、異常リピート短縮作用をもつ低分子化合物は、トリプレットリピート病のリピート長のさらなる伸長を防ぐだけでなく、究極的にはリピート長を正常化させ疾患の根治にいたる、新たな治療薬となる可能性が示された。
|