研究課題
髄鞘は跳躍伝導と神経保護の二つの観点から中枢神経系において必要不可欠の構造物である。その重要性は多発性硬化症に代表される脱髄疾患の病状からも明らかであるが、昨今はアルツハイマー病やパーキンソン病、ALSなどの神経変性疾患、統合失調症や鬱病などの精神神経疾患、或いは脊髄損傷などの外傷においても、神経細胞のみならず髄鞘の障害がその病態に深く関与していることが解明されつつある。本研究は神経変性疾患や脊髄損傷の新たな治療標的として髄鞘が有する可能性を追究することを目的としている。過年度の報告の通り、昨今得られている幾つかの治験により、当初想定していた髄鞘化誘導医薬品候補化合物の単純投与では髄鞘再生は誘導されない可能性が示唆され、むしろ、髄鞘の乾燥重量の大半を占める脂質の供給系を担保することが重要であるとの認識に至った。このため、特に神経変性などが生じやすくなる加齢マウスにおいて、髄鞘の恒常性維持には髄鞘脂質供給系の健全性が必要であるとの作業仮説を立て、これを検証するべく、申請者が既に作成していた髄鞘脂質供給系を止めた動物モデル(アストロサイトのケトン体合成能を障害させた遺伝子改変マウス)を加齢化させ、神経変性などの事象が生じ得るかを解析することとした。平成27年度は平成26年度に引き続き、上記作業仮説の検証を進めるべく、老齢化した当該マウスの組織学的解析及び行動解析を実施し、作業仮説を裏付ける幾つかの根拠を得るとともに、予想していなかった知見が認められた。現在これら結果が有する意義の解明を目指して、更なる解析を続けている。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Journal of Neuroscience
巻: 36 ページ: 2796-2808
10.1523/JNEUROSCI.1770-15.2016.
http://www.keio-med.jp/neurology/nig/index.html
http://user.keio.ac.jp/~aa603146/