研究課題
若手研究(A)
1)本邦におけるCMCD 患者の遺伝的背景の検討本邦のSTAT1異常によるCMCD患者10人の解析を行い、フローサイトメトリーにを用いたリン酸化STAT1の検出による迅速診断が有効であることを示し、論文報告を行った。さらに、Casanova教授(海外共同研究者)との共同研究で、次世代シークエンサーを用いたエクソーム配列解析により、CMCDの新規責任遺伝子の同定に成功した。同定した遺伝子は転写因子であり、今年度に詳細な機能解析を行う予定である。2) STAT1 変異がシグナル伝達に及ぼす影響とその機序について検討STAT1の過剰なリン酸化のメカニズムを解析するため、STAT1リコンビナント蛋白を精製したのち活性化JAK2とin vitroで反応させ、STAT1リン酸化の速度を検討した。その結果、変異STAT1は野生型STAT1と同等の速度でリン酸化を受けることが明らかとなり、過剰なリン酸化は脱リン酸化障害に由来することが証明された。次に、脱リン酸化障害を証明するため、STAT1の核内脱リン酸化酵素であるTCP45の精製を行った。精製したTCP45をリン酸化されたSTAT1と反応させることで脱リン酸化を検討したが、STAT1の脱リン酸化は検討できなかった。原因は、STAT1リン酸化後もJAK2が持続的に結合しているためであり、様々な実験の条件設定を行ったもののJAK2を外すことができず、検討を断念した。
1: 当初の計画以上に進展している
1)次世代シークエンサーを用いたエクソーム配列解析により、CMCDの新規責任遺伝子の同定に成功した。2)STAT1機能獲得性変異のスクリーニング法を確立し、論文発表を行った。3)野生型STAT1と変異STAT1のリン酸化速度をin vitroで測定して、STAT1の過剰なリン酸化が脱リン酸化障害に起因することを明らかとした。残念ながら、STAT1の核内脱リン酸化酵素を用いた脱リン酸化障害のメカニズムの解明には至らなかったが、充分以上の成果と考えた。
1) CMCD患者の遺伝的背景の検討前年度と同様に、フローサイトメトリーを用いた迅速診断と遺伝子解析を組み合わせることにより、STAT1 変異のスクリーニングを継続する。同定されたSTAT1 新規遺伝子変異は、STAT1 欠損細胞株を用いたレポーターアッセイによりGAS転写活性を検討することで評価を行う。さらに必要に応じて、ウエスタンブロット、ゲルシフトアッセイによる機能解析を追加する。STAT1変異が同定されない患者では、次世代シークエンサーを用いたエクソーム配列解析を行い、新規責任遺伝子の同定を試みる。2) CMCD新規責任遺伝子の機能解析前年度に同定したCMCD新規責任遺伝子A(遺伝子名は秘匿)は転写因子であり、遺伝子強制発現実験を行い、ゲルシフトアッセイ、レポーターアッセイ、ウエスタンブロットを用いて変異の機能解析を行う。患者末梢血のex vivo解析では、Th17細胞の減少が認められている。患者で認めるTh17細胞減少の詳細を検討するため、患者由来のnaive T細胞をin vitroで分化誘導し、Th1, Th2, Th17細胞への分化状態を検討する。同時に分化した細胞が産生するサイトカイン(IFN-γ, IL-4, IL-5, IL-6, IL-17, IL-22)を測定する。上記の機能解析を進めるとともに、変異が同定された患者群の臨床症状を詳細に聴取することで、疾患の全体像を明らかとし論文発表を行う。
エクソーム解析候補の家系例(家系中4人の解析を予定)で、受診上の都合でエクソーム解析の同意を得るのに時間がかかり、年度中に解析を行うことが出来なかった。そのため次年度使用額が生じた。次年度使用額が生じた理由の部分で提示したエクソーム解析候補の家系例(4人:既に同意を所得済)のエクソーム解析を行うために使用する。
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