研究課題
慢性皮膚粘膜カンジダ症(CMCD)患者の半数で、STAT1機能獲得性変異が同定される。我々はSTAT1正常のCMCD患者を対象に次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析を行い、常染色体劣性遺伝を呈するRORγT異常症(責任遺伝子RORC)の3家系6例の同定に成功した。RORγTは、IL-17を産生するTh17細胞におけるマスター転写因子として知られている。興味深いことにRORγT異常症患者は、慢性のカンジダ感染症を呈するだけでなく、BCGに対する易感染性を示した。患者で同定された変異RORγTは機能喪失性変異であった。患者末梢血ではTh17細胞の減少が認められ、この所見がCMCD発症の分子基盤になっていると考えた。患者におけるTh17細胞の減少は、過去に報告されているRORγTノックアウトマウスで認める所見と一致していた。一方、RORγTノックアウトマウスでは、マイコバクテリアに対する易感染性は検討されておらず、患者で認めた所見は、RORγTの未知の機能を示す所見と考え研究を進めた。宿主のマイコバクテリア排除において、IFN-γが重要な役割を果たすことが知られていたため、我々はIFN-γに着目して研究を行った。その結果、患者末梢血由来単核球は、BCG、結核菌刺激で誘導されるIFN-γ分泌が障害されていることが明らかとなった。一方で、PMA, Ionomycin刺激に対するIFN-γ分泌能は正常に保たれていた。これらの結果からRORγTの異常により、マイコバクテリアに対する抗原特異的なIFN-γ産生障害に至り、臨床的にBCGに対する易感染を示したと考えた。現在、これらの研究成果を論文発表するために投稿作業を行っている。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究はCMCDの新規責任遺伝子の同定を目標に行われている。現在までに、常染色体劣性遺伝を呈するRORγT異常症の同定に成功しており、当初の見込み以上の成果が出たと考えている。機能解析の大部分が終了し、現在投稿作業が進んでいる状況であり、当初の計画以上の順調な進展といえる。
本研究内容の論文化に努める。同定したRORγT異常症について広報し、さらなるCMCD症例の蓄積を行う。それらの患者を対象に、STAT1異常の有無を最初に検討する。STAT1正常のCMCD患者ではエクソーム解析を行い、新たな新規責任遺伝子の同定に努める。新たな新規責任遺伝子の同定に成功した場合、RORγT異常症と同様に機能解析を行うことで病態解析を行う。
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