研究課題/領域番号 |
25713040
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山澤 一樹 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (10338113)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / ゲノムインプリンティング / 先天異常症候群 |
研究概要 |
近年、ゲノムDNA中に発見された5-ヒドロキシメチルシトシン(5-hydroxymethyl C: 5hmC)は、5-メチルシトシン(5-methyl C: 5mC)の酸化産物であり、DNA脱メチル化機構の一翼を担っている。本研究の目的は、ゲノムインプリンティング異常により発症する代表的なヒト先天異常症候群であるSilver-Russell症候群、Beckwith-Wiedemann症候群、Prader-Willi症候群、Angelman症候群、第14番染色体父性および母性片親性ダイソミー(UPD(14)patおよびUPD(14)mat)症候群において、各疾患責任領域(インプリンティング調節領域)における5hmCの分布を明らかにし、インプリンティング異常症において5hmCの果たす役割を解明することである。 平成25年度は、患者末梢血由来DNAを改良型バイサルファイト法(oxBS法)を用いて処理することにより、一塩基レベルの解像度でC、5mC、5hmCの区別が可能であることを確認した。現在、oxBS処理済サンプルを用いてインプリンティング調節領域におけるC、5mC、5hmCの分布を解析中である。 また、研究責任者はマウスを用いた予備実験で脳に5hmCが多く含まれ、特徴的な分布を示すことを見出している。患者脳組織を直接解析することは困難であるため、患者皮膚細胞から疾患特異的iPS細胞を樹立し、それを神経細胞に分化誘導するin vitro実験系を構築中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、5mC/5hmC抗体を用いた免疫沈降法による解析を予定していたが、oxBS法を代替法として用いることにより、さらに詳細で精密な解析が可能となった。一方で、oxBS法は試薬が高価であること、DNAのダメージが大きいことなどが問題であり、結果として処理できるサンプル数が当初より減少した。検体数をしぼり、より高解像度の解析を続けて行く方針である。またiPS細胞を用いたin vitro系の開発も同時に試みており、インプリンティング異常症における5hmCの役割の多角的な解明が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後もさらに症例数と解析部位を増やし、oxBS法を用いたインプリンティング調節領域におけるC、5mC、5hmCの分布の解析を行う。また、特徴的な5hmCの分布が得られた症例に関しては、次世代シーケンサーを用いて"methylome"との比較のうえで"hydroxymethylome"を明らかにする。 さらに、疾患特異的iPS細胞を用いて神経細胞を分化誘導する実験系を構築し、5hmCの分布を解析する。加えて、5mCを5hmCに変換する酵素であるTET1-3のノックアウト細胞を作成し、神経細胞分化において5hmCが果たす役割を明らかにし、インプリンティング異常症における神経症状の病態を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は研究補助人員を雇用せず、予定した人件費に余剰が生じたため。また購入予定であった超微量分光光度計が学内他施設からの貸与により無償で使用することができ、物品費に余剰が生じたため。 消耗品、特にoxBS法に用いる試薬は非常に高価である上に多量に使用することが必要であり、充分な予算を確保する。またiPS細胞培養、神経細胞分化、ノックアウト細胞作成など細胞培養の実験を予定しており、試薬およびディスポーザブル器具購入に対して充分な予算が必要である。加えて、超低温フリーザーが故障し研究に支障を来しているため、平成26年度に共同備品として新規購入する予定である。
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