研究課題/領域番号 |
25713041
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤田 靖幸 北海道大学, 大学病院, 助教 (80374437)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 表皮水疱症 / iPS細胞 / 17型コラーゲン / 造血幹細胞移植 |
研究概要 |
同系マウス由来の正常遺伝子を有するiPS細胞(GFP+TgマウスおよびCD45.1発現マウス)に対し、Lhx2遺伝子導入による血球系分化誘導を行った。血球系前駆細胞への分化効率をフローサイトメトリーで検討したところ、15-30%であった。これらの細胞はin vitroで各血球系への分化能を確認した。こうして得られたiPS細胞由来造血前駆細胞を、17型コラーゲン欠損表皮水疱症マウス(n=3)に移植したところ、全例が2週間以内に死亡した。また、17型コラーゲン欠損表皮水疱症マウスの繁殖が困難であり、実験遂行に必要な匹数を十分確保することができなかった。そこで当初の研究計画の予定通り、17型コラーゲンヒト化マウス(マウス17型コラーゲンは欠損しているものの、ヒト17型コラーゲンを発現しているマウス。繁殖が容易かつ、移植細胞由来のマウス17型コラーゲンの発現を同様に検討することが可能)を移植対象とし、サポーター細胞として17型コラーゲン欠損マウス骨髄細胞と混合して移植したところ(n=10)、移植後200日の時点で生存率は約50%となり、未治療群と比較して生存予後の改善傾向がみられた。GFP+Tgマウス由来iPS細胞から誘導した造血幹細胞を移植した群においては、フローサイトメトリーでiPS細胞由来末梢血細胞の割合を解析したところ、10.3±4.8%にとどまった。移植後の上皮化皮膚においては、RT-PCRにて2匹にわずかなマウス17型コラーゲンmRNAの発現が確認されたが、現時点で明瞭なマウス17型コラーゲンの発現を、免疫蛍光抗体法で確認されなかった。 iPS細胞由来幹細胞移植群と、従来の骨髄移植群で出現するドナー由来表皮角化細胞の分子学的差違を検討するため、各々の細胞を分離抽出し、マイクロアレー法で解析したところ、iPS細胞由来角化細胞でCXCL9などの発現上昇が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
移植対象となる17型コラーゲン欠損マウスの確保の点では当初の研究計画が遂行困難になっているが、当初の予定通り移植レシピエントを17型コラーゲンヒト化マウスに設定したことで、移植効率やドナー由来蛋白の発現検討、生存曲線作成やマイクロアレー解析などが順調に遂行されている。
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今後の研究の推進方策 |
マウス実験に関しては、17型コラーゲン欠損マウスでの実験系をすすめ、また現在主に進行している17型コラーゲンヒト化マウスにおける研究遂行・解析を継続する。 また、倫理審査委員会の承諾を得た上で、正常ヒトiPS細胞を血球系に分化誘導し、ヒト血球系が生着しうる免疫不全NOGマウスに異種移植する。マウスでの実験系と同様に、移植後のヒト表皮角化細胞構成蛋白の発現を検討する。また、申請者らは申請者らの施設では重症表皮水疱症への造血幹細胞移植に向けた取り組みを推進しており(清水宏代表:平成24年度日本学術振興会科学研究費助成事業基盤研究(A))、これらによって得られた知見を応用して、最終的にはヒトiPS細胞を用いた造血幹細胞移植による難治性皮膚疾患の治療を目指して基礎的知見を蓄積する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度においては17型コラーゲン欠損マウスの成長・生存が低調であったため、iPS細胞の購入維持、関連物品に必要な経費が当初の予想よりも少なかった。そのため次年度使用額が生じた。 平成26年度においては17型コラーゲン欠損マウスに加えて、17型コラーゲンヒト化マウスの繁殖向上を予定しており、繰り越された研究費を同関連物品で使い切る計画である。
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