研究課題
平成27年度の計画は、「脳のどの部位のセロトニン遊離量の増減がうつ様行動に重要なのか?」に取り組むことであった。セロトニン遊離量の増減を操作するためには遺伝子改変マウスを用いた。中枢セロトニン神経細胞にのみ光受容体であるチャネルロドプシン2もしくはアーキロドプシンを発現するマウスを用いた。これらのマウスを用いることで、目的脳部位に光ファイバーを埋め込んで特定波長の光を照射することで容易にセロトニン神経活動を操作できる。本年度の目的は縫線核のような起始核ではなく、セロトニン神経の投射先(前頭前野、扁桃体、側坐核、海馬、中隔、背側線条体、等々)に光を照射することにより、脳のどの部位のセロトニン遊離が特にうつ様行動に重要なのかを特定することである。うつ様行動の測定はこれまでと同様に強制水泳試験を用いた。まずはこれらの投射部位に直接光照射することによって十分なセロトニン遊離量の増加が引き起こせるかどうかを調べる必要があった。この点を検証した結果、前頭前野、扁桃体においては十分なセロトニン遊離を引き起こせることをin vivo microdialysis法によって確認することが出来た。この結果を踏まえ、前頭前野、扁桃体それぞれに光ファイバーを埋め込んでセロトニン神経活動を操作したが、うつ様行動の変化は見いだせなかった。先行研究によればこれらの部位はうつ様行動に関与する可能性が高いと示唆されていたため、意外な結果であった。
2: おおむね順調に進展している
投射先でのセロトニン遊離量操作方法を確立し、予定通りに投射部位の操作とうつ様行動の関係を調べることができている。ただしまだ関連部位を特定できていないため、おおむね順調、とした。
他の脳部位、海馬、側坐核についても光ファイバーを埋めて同様の実験を遂行する。脳部位を特定できれば、関連するセロトニン受容体を同定する実験を行う。
経費の節約による。
経費の節約により生じた未使用額については、今年度の計画のための光ファイバーおよび接続ケーブルの購入費用に充てる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Behavioural Brain Research
巻: 296 ページ: 361-372
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