研究実績の概要 |
本年度は以下の2点について検討を行った。 (1)交尾未経験雄マウスの攻撃行動に関わる分界条床核菱形核(rhomboid nucleus of the bed nucleus of the stria terminalis;BSTrh, Tsuneoka, 2015) におけるシナプス入力を調節する機構解明を目指した。本年度はBSTrhに特に高密度に入力するドパミン神経繊維に着目した。行動中のドパミン動態を知るためにin vivo マイクロダイアリシス法による検討を行ったところ、攻撃行動を示したマウスでBSTrhにおけるドパミン遊離レベルが低下する傾向が観察された。電気生理学的検討からドパミンは抑制性より寧ろ興奮性シナプス電流を強く抑制することが明らかとなったことから、ドパミンは全体として抑制性の機能を持つと考えられた。以上よりドパミン遊離量変化によって興奮性シナプス伝達が調節され、仔マウスに対する攻撃を実行するか否かの行動選択が制御されることが予想される。 (2)BSTrhを制御する上流領域の1つとして考えられる内側視索前野を検討項目に加え、社会経験に依存したシナプス可塑的変化の解明を目指した。交尾を含む雌との同居、または去勢手術によってBSTrhでは変化が認められなかったが、同様の社会経験および去勢手術によって電気刺激誘発性抑制性シナプス電位の振幅の変化を示す内側視索前野への入力シナプス経路を新たに見出した。この抑制性シナプスの入力元として内側扁桃体背腹側核が重要な候補であることが光遺伝学的手法を用いた実験より認められた。
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