研究課題/領域番号 |
25713045
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
上原 知也 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (10323403)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | PET |
研究実績の概要 |
昨年度までの検討より,ガリウムと安定な中性の策定を形成するNOTAを基本骨格とした薬剤の設計を行った.これまでに開発してきた腎臓から尿中への排泄される放射性代謝物は馬尿酸様の構造を有し,安息香酸にグリシンが結合した構造を有していることから,新規配位子としてNOTA-Bz-COOHを設計,合成した.本配位子にグリシンを結合したNOTA-Bz-Glyを放射性代謝物として遊離するよう刷子縁膜酵素の基質配列Gly-Phe-Lysを導入した新規標識薬剤を開発した.Ga-NOTA-Bz-Gly-Phe-Lysは刷子縁膜酵素を含むベジクルを用いた検討より,酵素認識を受け,所期の目的通りにGa-NOTA-Bz-Glyを遊離することを認めた.また,Ga-NOTA-Bz-Glyを単独で投与すると,速やかに尿中へと排泄されることを認めた.そこで,本薬剤を抗体フラグメントと結合できるようマレイミド基を導入した標識薬剤を設計,合成した.本薬剤を用いて,抗体Fabフラグメントを標識し,マウス体内動態を検討した.従来法により標識した抗体フラグメントに比べて腎臓への放射活性の集積は低減したが,その割合は十分ではなかった.これは,刷子縁膜酵素の作用によりGa-NOTA-Bz-Glyが遊離される前に,腎細胞内に取込まれたと考えられた.昨年までの検討より,Ga-NOTA骨格にイソシアナート基を介してメチオニンを結合したGa-NOTA-SCN-Metが腎細胞内から速やかに尿中へと排泄されることを認めたことから,現在,刷子縁膜酵素の作用により,Ga-NOTA-SCN-Metを遊離する薬剤について検討を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画どおり,刷子縁膜酵素認識を受け,尿排泄性の放射性代謝物を遊離する薬剤を開発し,動物実験において評価できている.実際,従来法で標識した抗体フラグメントに比べ,腎臓への集積の低減に成功している.しなしながら,腎臓への放射活性の集積低減には,さらにある改善の余地があることから,これまで得られた知見から新たな標識薬剤へと展開していく.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の知見に基づき作製した,中性の錯体を放射性代謝物として選択した場合においても,腎臓への放射活性の集積が観察された.インビトロの検討より,基質は腎刷子縁膜酵素の基質として認識されていることから,これは目的とする放射性代謝物を遊離する前に,標識部位全体が腎細胞に取込まれてしまっているためと考えた.以上の知見から,腎細胞に取込まれた場合においても,腎臓リソソームから速やかに尿中へと遊離されれば,腎臓への放射活性を低減できると考え,新たな錯体を用いた薬剤の開発を進めたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,腎臓の放射活性を低減させるために,中性の錯体を遊離するような薬剤の開発を行った.そのため経費の多くは合成するための費用に用いた.また,酵素認識の評価や体内動態の評価に実験動物を用いたが,腎臓への集積低減に改善の余地が考えられたため,当初予定していた量より低くなった.また担癌マウスへの使用も少なくなった.このような状況のため,総価格が減少した.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は本課題の最終年度であり,これまで得られた知見から,腎刷子縁膜酵素の作用により尿排泄性の放射性代謝物を遊離する,或は取込まれた場合においても速やかに尿中へと排泄される標識薬剤の開発を行っていく.合成手技はこれまでに確立しており,動物実験が主体となっている.特に担癌マウスを用いた検討が多くなることから,昨年度の残金により増加する実験動物代にあてたいと考えている.
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