RI標識抗体フラグメント投与時に観察される腎臓へ非特異的集積を低減させる放射性ガリウム標識薬剤の作製を行った。昨年までの研究より、Ga-NOTA-Methionine (Ga-NOTA-Met)が腎臓内から尿中へと速やかに排泄されることを認めたことから、本年度は、RI標識抗体フラグメントが腎細胞内に再吸収される際に、腎刷子縁膜酵素の作用により、Ga-NOTA-Metを遊離することで、腎臓の放射活性を低減させる標識薬剤の設計、合成、評価を行った。刷子縁膜酵素の基質配列として、Met-Val-Lys (MVK)を選択し、抗体フラグメントとの結合部位としてマレイミド基(Mal)を導入したNOTA-MVK-Malを作製した。本薬剤を抗c-kit抗体のfabフラグメントに導入し、Ga-67により標識を行い、Ga-67-NOTA-MVK-Fabを得た。一方、MVK配列の酵素認識を検討するために、抗体結合部位をベンジルアミドに置換したGa-67-NOTA-MVK-Bzoも作製した。本化合物を刷子縁膜小胞とインキュベートしたところ、Ga-67-NOTA-Metの遊離を認め、Ga-67-NOTA部が結合したあともMVK配列が酵素認識を受けることを認めた。Ga-67-OTA-MVK-Fabを正常マウスに投与したところ、従来法により標識したGa-67標識Fabに比べ,腎臓への集積は投与10分後から有意に低減した。また、尿中に排泄された放射活性を分析したところ、その大部分がGa-NOTA-Metであったことから、本標識薬剤は、Ga-NOTA-Metを腎刷子縁膜酵素の作用により遊離することで、腎臓への集積緒を低減していると考えられた。担癌マウスを用いたSPECT撮像実験において,腫瘍を明瞭に画像化することに成功した。
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