研究課題/領域番号 |
25713046
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木村 寛之 京都大学, 放射性同位元素総合センター, 助教 (50437240)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 原発性アルドステロン症 / PET/SPECT用分子イメージングプローブ / CYP11B2選択的 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、アルドステロン産生腺腫が引き起こす原発性アルドステロン症(PA)の発症に関わる分子機構を標的として、医薬品化学および薬物動態学的な観点から分子設計を行い、副腎でのPA責任病変を高感度で検出・評価しうるPET/SPECT用分子イメージングプローブの開発を行うことにある。ステロイド生合成系において、アルドステロン合成酵素(CPY11B2)はアルドステロン合成のみに関与する酵素である一方、ステロイド11β‐水酸化酵素(CPY11B1)は、アルドステロン及びコルチゾールの両方の合成に関与する。従って、アルドステロンの過剰分泌をコルチゾールの過剰分泌と区別して検出することには、CPY11B2に対する選択性が高いことが好ましい。 今年度は、新規化合物の開発と、インビトロ評価法の再構築、モデル動物の作製を検討した。新規化合物としては、平成25年度までの研究成果を基に構造活性相関研究を行い、CYP11B2への選択性((Selectivity Factor (S.F.) = IC50CYP11B1 / IC50CYP11B2)を向上させた誘導体(SF=223, IC50B2=0.63 nM)の開発に成功した。インビトロ評価法としては、原発性アルドステロン症の治療のためヒト患者から摘出された副腎を用いて切片を作製し、オートラジオグラフィ―法で特異性を評価する方法を確立した。モデル動物として、ラット低ナトリウム負荷モデルの作製を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プローブ開発においては、H25年度の成果を基に構造活性相関研究を行いCYP11B2への選択性に関与している部位に着目し誘導化を行った。その結果、SF=223, IC50B2=0.63 nMの化合物の開発に成功した。更に、正常マウスを用いた体内分布実験の結果、投与後5分で8.7%IDと比較的高い集積を認めた。次に、ヒト患者から摘出された副腎から切片を作製し、オートラジオグラフィ―法で特異性を評価したところ、病理学的にアルドステロン産生腺腫が確認された領域に、選択的に放射能集積が認められた。 モデル動物としては、ラット低ナトリウム負荷モデルの作製を検討しているが、モデルとして利用できるまでにはもう少し時間を要すると考えている。他のモデル動物が作製出来ないか、調査を進めている。前述の理由より、本研究は概ね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
有望な化合物に関しては、先ずは正常マウス、ラットに投与して経時的にPETあるいはSPECTでイメージングを行い、副腎が描出可能かどうかを検討する。モデル動物が確立されれば、モデル動物に投与して経時的な副腎への集積性、血液副腎比、副腎肝臓比、副腎腎臓比を指標にプローブの選別を行う。投与後副腎肝臓比は2倍以上、その他の周辺臓器(筋肉・腎臓・膵臓・脾臓など)比は5倍以上を目指す。また、標的部位に結合する既知の化合物あるいはプローブの非標識体を投与してインビボブロッキング実験も行い、副腎に集積した放射能の標的特異性について検討する。原発性アルドステロン症の治療のためヒト患者から摘出された副腎を用いた特異性の評価法が確立出来たので、モデル動物が確立されるまでは副腎腺腫を用いたin vitroオートラジオグラフィーを実施し、ヒトでの有効性を評価する。PETプローブに関しては、F-18を導入した化合物の開発には一定の成果が出ているので、今後はジェネレーター産出核種であるGa-68導入化合物の開発に着手する。SPECTプローブに関しては、残り期間を考慮し核種と化合物の絞り込みを行う。 あわせて生体内安定性、薬物動態特性の向上にも取り組み、インビトロおよびインビボの薬効評価系にてその性能を確認する。PETあるいはSPECTでイメージングを行い、副腎が描出可能かどうかを検討する。以上の結果を基に、開発したイメージングプローブを用いて非侵襲的かつ高精度なPA画像診断法を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
モデル動物の作製に時間がかかっており、本来予定していたインビボ評価を十分に行うことが出来なかった。平成27年度では、モデル化合物の作製を速やかに行うと共に、PETあるいはSPECTを用いたイメージングの検討を実施し、PA画像診断法の可能性を探る。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度では、モデル動物を用いたインビボイメージング研究を中心に進めるとともに、その結果を基に必要があれば新規誘導体の開発も行う。また、研究を加速するためにゲル撮影装置の購入を予定している。
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