研究課題
放射線治療に用いられる陽子や炭素等の荷電粒子線やX線が人体中あるいはビーム通過物質との核反応によって二次粒子を放出することが知られている。二次粒子の計測は従来の線量計測法では非常に困難であるため、二次粒子の定量的な線量評価が行われていないのが現状である。本研究では、CR-39プラスチック固体飛跡検出器と原子間力顕微鏡を組み合わせた精密イオントラック計測法を用いて、二次粒子の線量評価を実施することを目的とする。本年度では、陽子、ヘリウム、炭素線と標的物質との核破砕反応で発生する二次粒子のLET分布や放出角度分布等の物理データの系統的測定を行った。この結果、入射原子核の電荷が大きくなると、単位粒子あたりの二次粒子の生成断面積は大きくなり、炭素線は陽子線の約6倍になることが分かった。一方で、線量という観点においては、同じ1Gyを照射した場合のLETと粒子フルエンスが重要になる。炭素線のLETは陽子線に比べて25倍大きいので、1Gyで照射される炭素線のフルエンスは陽子線の約1/25となる。従って、線量寄与という観点では、炭素線は陽子線の1/5~1/6程度であることを実験により確認した。本結果は、学術論文誌に投稿準備中である。本研究で得られたデータを用いたバイプロダクトの結果として、宇宙放射線における二次粒子の線量寄与についても見積もりを行った。宇宙空間では陽子線やヘリウム、炭素線などの荷電粒子群で満ちており、宇宙飛行士の被ばくの原因となっている。1次宇宙放射線による線量の評価は世界各国が精力的に行っている一方、これらから二次的に発生する二次粒子の線量寄与については未だ明らかとなっていない。従来10keV/um以上の高LET粒子による線量当量に対して、二次粒子はその約16%を占めていることが分かった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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