研究課題/領域番号 |
25713050
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
仲田 興平 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (30419569)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オートファジー / 癌幹細胞 / 膵臓癌 |
研究実績の概要 |
膵臓癌を代表とする難治性固形腫瘍は、早期から浸潤、転移を生じ、その多くが放射線照射や化学療法に抵抗性である。近年、乳癌、膵臓癌、脳腫瘍などの固形癌において、血液腫瘍と同様に、癌幹細胞の存在の可能性が示唆され、注目を集めている。癌幹細胞は、正常幹細胞同様に細胞周期を静止期(G0)に維持する事により、癌組織を維持しているが、現在使用されている抗癌剤の多くは、細胞分裂中のDNAに取り込まれ、DNA合成阻害により癌細胞の増殖を抑えているため、静止期に留まっている癌幹細胞に対して既存の化学療法は効果が無い。そのため、癌細胞の再発を防ぐには、癌幹細胞の静止期維持機構を解明し、癌幹細胞の治療抵抗性を改善する方法の開発が急務である。オートファジーは、細胞内の代謝に不可欠なシステムであるが、発癌から転移、浸潤、化学療法抵抗性まで癌の様々な局面に重要な役割を果たしていることが明らかになった。近年、血液幹細胞の維持にオートファジーの関与が初めて報告され、幹細胞の静止期維持機構に関与している可能性が示唆されたが、固形癌幹細胞静止期維持機構とオートファジーに関する報告は皆無である。 昨年度は、幹細胞マーカーとして期待されるCD133陽性分画およびCD44陽性分画に関して解析をすすめた。現時点で、手術組織からCD133、CD44細胞分画分取と腫瘍形成性の確認は未達成であるが、代替手段として遺伝子改変膵癌モデルマウスの腫瘍や、当研究室で保存している癌細胞株から同様の方法を行う事を試みる。また一部の癌細胞株でshRNAを用いて、オートファジー必須遺伝子であるAtg7をノックダウンした細胞株を作成済であり、これらと親株の幹細胞マーカーの解析も進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
癌細胞株でshRNAを用いて、オートファジー必須遺伝子であるAtg7をノックダウンした細胞株を作成済である。またオートファジーの評価として、オートファゴソームのマーカーであるLC3やオートファジーで特異的に分解されるたんぱく質であるp62などを用いて、オートファジーの亢進や抑制に関する評価法は既に確立できている。 一方、手術切除組織からの十分量の膵癌幹細胞分画の細胞集団の分取には成功しておらず、今後セル・ソートを用いた細胞分取技術を向上・確立する必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
幹細胞マーカーを用いて純化された細胞集団を免疫不全マウスに移植し、腫瘍形成能や多分化能、腫瘍再現能などを評価する。さらに2次移植を行い癌幹細胞としての能力を証明する。幹細胞集団とそれ以外の集団における抗癌剤や放射線への感受性、さらに固形癌特有である浸潤・転移能、またこれらの能力に関連する分子発現を、in vitroにおいて検討していく。 幹細胞集団とそれ以外の集団におけるオートファジー誘導の違いを確認する。確認方法には蛍光免染、ウエスタンブロット、電子顕微鏡を用いて行う。オートファジーを抑制する事による細胞周期を含めた幹細胞特性の変化を確認する。さらに幹細胞群に対してコントロール群とオートファジー抑制群に分け、抗癌剤耐性、放射線耐性の変化を検討する。オートファジー抑制により幹細胞の分化誘導がみられ治療耐性が改善する事が考えられる。 オートファジー抑制による幹細胞の誘導は、FACSで幹細胞マーカーであるCD133分画の細胞集団の割合で評価する。また、同時にFACSで細胞周期解析も合わせて行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬類、抗体、リボ核酸干渉・遺伝子強制発現、実験用マウス、実験用ガラス器具、研究成果発表費、論文投稿料
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