研究課題/領域番号 |
25713052
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
矢野 文子 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (80529040)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Runx1 / Prg4 |
研究実績の概要 |
Runx1の発現調節により、Nkx3.2/Bapx1がRunx1の下流の分子である可能性が高いことが示唆されたため、マウス関節軟骨にて発現解析を行ったところ、組織切片において、Runx1と同様に正常関節軟骨最表層から関節軟骨全体に発現しており、OA関節軟骨層では発現していないことが示された。さらにin vitroでBapx1ノックアウトレンチウイルスを用いて、Runx1の発現を解析したところ、Bapx1の欠損状態ではRunx1は軟骨分化を制御することができなくなり、Runx1はBapx1を介して軟骨肥大化を抑制していることが示唆された。軟骨破壊のトリガーである軟骨肥大分化を選択的かつ強力に制御しうるRunx1mRNAをOAモデルマウスの膝関節内に投与することによってOA に対する治療効果をin vivo で検討したところ、骨棘の抑制と軟骨破壊の抑制が示唆されている(研究協力者のグループより論文発表済み)。さらにBapx1mRNAを投与することで、OAの発症を抑制できないか検討する予定である。 最近では関節軟骨組織の最表層(SFZ)の破綻がOA発症のトリガーであること、SFZ細胞はルブリシン(Prg4)など潤滑成分を多く分泌して関節の滑動性を担保し、その深層の関節軟骨全体を保護する作用があることなどが明らかとなってきた。Runx1とBapx1が関節軟骨層だけでなく、変形性膝関節症発症のきっかけとなるSFZに発現していることから、そこにおける保護作用がOA発症のメカニズムに関与するのではないかと示唆され、Prg4EGFPCreERt2-Runx1floxマウスの解析を行っている。OAモデル、自然発症モデルを解析することで、変形性膝関節症の発症のメカニズムとRunx1の関連をより詳細に検討できる。Runx1が発生期だけでなく、成体期の正常関節軟骨組織において、重要な転写因子であるという点で、Runx1のOA発症における保護作用の解析を深める価値があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Runx1の下流遺伝子を確定することで、OA肥大化抑制効果をみることができた。マウスやベクターなどのツールはすでに準備できていたために順調に研究をすすめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、H28年12月より国際共同研究強化として滞在しているハーバード大学・Children’s HospitalでのPrg4関連の研究ツールを共同開発し、新規のアプローチで関節軟骨変性の研究を推進する。 Runx1の下流のシグナルだけでなく、Prg4をとりまくシグナルの解析方法を学ぶことができれば、変形性膝関節症のメカニズムや予防、最表層細胞を再分化誘導する治療薬の開発にまで飛躍的に発展させる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
Runx1が関節軟骨層だけでなく変形性関節症発症のきっかけとなる関節軟骨最表層に発現し、そこにおける保護作用が重要な働きをしていることが明らかとなった、関節軟骨最表層部位特異的Creマウスを入手できることが可能となり、変形性関節症の発症のメカニズムとRunx1の関連をより詳細に検討する必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
関節軟骨最表層Runx1欠損マウスの作出(Prg4CreERt2;Runx1floxマウス)を行い、変形性関節症モデルでの組織解析を行う。
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