研究課題
本研究助成では、加齢黄斑変性(AMD)の中でも萎縮型AMD(dryAMD)の病態解明を目標とした。当初申請書類で、私はdryAMDと滲出型ADM(wetAMD)を異なる疾患と記載していたが、実際に研究を進めると、これらの疾患概念はかなり近いものであると感じられる。現実的にはdryAMDの研究を進めるうちにwetAMDの新規治療ターゲットや病態理解につながる興味深い発見がされた。まずdryAMDに関する実績報告として、海外の他施設と合同でおこなているdryAMD研究を進め、自施設での研究結果をInvestigative Ophthalmology & Visual Science(2014)に報告した。また、共同で行った研究内容に関してもNature Medicine(2014)に報告した。一方でdryAMD研究で副産物として得られたwetAMDに関する研究業績として、ヒスタミン受容体H4(HRH4)がwetAMD治療の新規ターゲットとなる可能性を見出し、それに関する研究結果をBritish Journal of Pharmacology (2014)に報告した。さらに、内服治療の可能性について研究を進め、研究結果をTranslational Vision Science & Technology (2015)に報告した。さらには、工学部と共同研究として行ったAMDに対する研究内容は、Scientific Reports(2015)に報告された。
3: やや遅れている
当初、加齢黄斑変性(AMD)の中でも進出型(wetAMD)ではなく萎縮型(dryAMD)を研究ターゲットとしていた。予備実験で野生型マウスからdryAMD用の眼底所見を作成することに成功したため、本研究助成金によってマウスの匹数・飼育期間を延長した。しかし、実際には目標期間に達する前に相当数のマウスが自然死してしまい、当初目標としていたサンプル量に対して大幅に少ないサンプル量しか回収されなかった。さらには、希少なサンプルを用いて幾つかのターゲットとなる因子の発現を調べたのだが、対照群(若いマウス)と比較して大きな差が確認されなかったものが多く存在した。慢性疾患や進行が非常に緩徐な疾患をターゲットとした場合に、寿命の短い小動物を用いて有意差を出すという事の難しさを痛感している。しかしながら、dryAMDの研究を行う上でwetAMDの病態理解は不可避なものであり、表現系の差をもってこの二つの概念を無理やり分けずに、同時に研究することは大いに有意義であった。結果的にはこの期間中にもAMDに関する様々な論文報告が可能であった。
今後も、現在存在するdryAMD様高齢マウスの飼育を継続する。それと同時に、in vivoの実験だけでなく、ヒト網膜色素上皮細胞を用いたin vitroの実験を拡大する。なかでも、通常の培養方法だけでなく極性培養法を用いる。この培養方法はすでに私の施設でセットアップがされており、AMDを模する環境にした際に様々な実験結果が得られている。なかでも、AMD患者のRPEに多く蓄積されていると報告されているアミロイドβやマロンジアルデヒドを培養細胞に負荷した際は、多くの変化が確認された。本年度はこれらの研究結果を別々にまとめて、科学雑誌に投稿予定である。
細胞実験・マウス実験の両方を同時進行しており、マウスが自然死しサンプル回収が遅れているため、次年度未使用額が生じた。
細胞実験・マウス実験の多岐に試薬等に使用される。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件)
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