研究実績の概要 |
本研究の目的は網脈絡膜滲出性病変に対して、リンパ管をターゲットとした新しい治療戦略の可能性検討である。 私は平成27年度、ヒトVEGF強制発現マウス(kimba)において、①既報どおり新生血管は誘導されるに関わらず、明らかな典型的リンパ管新生は誘導されないこと、②Lyve-1陽性マクロファージ数が増加することを観察した。平成28年度、Akitaマウス、Kimbaマウス、AkitaマウスとKimbaマウスを交配したAkimbaマウスにおいてリンパ管新生関連因子をPCR法にて検討を行った。VEGF-A, VEGF-C, VEGF-DともにAkimbaマウスにおいて野生型と比較し有意な上昇を認めた。さらにVEGFR-2, VEGFR-3においてもWT, Akitaマウスと比べAkimbaマウスでは有意な上昇を認めた。また、リンパ管マーカーであるLyve-1, podoplanin, Prox-1もWTに比べAkimbaマウスで有意な発現上昇を観察した。 私はこれら因子上昇と低酸素の関与を検討するため、酸素誘導網膜症モデルを用いて同様の検討を行った。PCR法にてVEGF-Aは発現上昇を認めたが、VEGF-Cは有意な低下を認めた。さらにpodoplanin発現上昇を認めたが、Prox1, Lyve-1は有意な低下を示した。 硝子体手術時に採取した硝子体サンプルにてVEGF-C, VEGF-D, 可溶型VEGFR-2の発現を検討した。VEGF-Dは検出限界以下だった。VEGF-C, 可溶型VEGFR-2は黄斑円孔に比べ増殖糖尿病網膜症眼では有意な上昇を認めなかった。さらにベバシズマブ投与眼においても非投与群と比較し、有意差は認めなかった。黄斑浮腫の有無においても3因子とも有意な差を認めなかったが、硝子体出血群においてVEGF-Cは有意に高値であった。 これらの結果より、低酸素とは独立した機序でVEGF-Aが高い糖尿病網膜にてリンパ管関連因子が網膜で誘導されることが示唆された。
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