研究実績の概要 |
本年度はまず、平成25年度に得られた結果を基にして、関節リウマチや変形性顎関節症などといった病的状況下における脂質メディエーターを介した血球系由来の破骨細胞、間葉系由来の軟骨細胞の細胞遊走能に関する解析を実施した。関節リウマチなどの自己免疫疾患などの炎症状態では血液中の脂質メディエーターの一つであるS1P(sphingosine-1-phosphate)濃度が上昇することが報告されている。そこでMRL/lprマウス由来破骨前駆細胞のS1P遺伝子発現量を対照群と比較したところ有意に上昇を認め、前駆細胞の遊走能が亢進していることが判明した。破骨細胞ではS1PレセプターであるS1PR1, S1PR2を介して遊走能が制御されていることが最近報告されていることからMRL/lprマウス由来破骨前駆細胞におけるS1PR1, S1PR2発現量を解析したところmRNAレベルでの強い発現がみられた。破骨前駆細胞を培養し、M-CSF, RANKL存在下にて4日間培養後、トランスウェルメンブレン上で12時間培養した。メンブレンの外のメディウム中にS1Pを添加しておくことで、S1Pに対する遊走細胞がメンブレンを通過し、96ウェルプレート上に移動する。その遊走細胞数を蛍光プレートリーダーにより測定した。対照マウス由来破骨前駆細胞と比較して、すべてのS1P濃度においてMRL/lprマウス由来OC前駆細胞の遊走能が高いことが示された。
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