研究課題/領域番号 |
25730003
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
大舘 陽太 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (80610196)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | グラフ同型性判定問題 / 固定パラメータ容易性 / 木幅 / 木距離幅 / 禁止部分グラフ / 計算量二分法 |
研究概要 |
計画の通り,木幅を制限したパラメータである木距離幅と,それをさらに制限した根連結木距離幅と根連結路距離幅を扱った.これらの木距離幅を制限したグラフパラメータは,グラフ同型性判定問題の固定パラメータ容易性の限界を探求するために本研究で導入されたものである.本年度の研究により,グラフの根連結木距離幅をパラメータとして制限した場合,グラフ同型性判定問題が固定パラメータ容易である,つまり,高速に判定可能であることが分かった.このために開発した一般的な手法により,その他多くの関連グラフパラメータに対しても同様の結果が得られることも分かった. また,禁止部分グラフ族によって定義されるグラフクラスに対して,グラフ同型性判定問題の研究を行った.それらのグラフクラスは,グラフパラメータを制限されたグラフクラスのある種の一般化とも考えることができる.この問題に対して,禁止部分グラフ族が有限の場合,グラフ同型性判定問題が多項式時間で解ける場合と,一般の場合と同じく難しい場合の計算量二分法を与えた.また,一般のグラフ同型性判定問題が多項式時間で解けないという仮定のもとで,禁止部分グラフ族が無限の場合には,そのような二分法が存在しないことを証明した.証明は,あるグラフクラスを定義して,そのグラフクラスに対してはグラフ同型性判定問題が多項式時間では解けず,かつ,一般の場合と同じほど難しくはない事を示すことによって行った.そのようなグラフクラスはこれまでに知られていなく,その存在を示したことは,独立した結果として興味深いものと言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,木距離幅の制限された場合に対して固定パラメータ容易性を示すことができた. 具体的には根連結路距離幅,より一般的には根連結木距離幅を定数パラメータとして制限した場合にはグラフ同型性判定問題が固定パラメータ容易であることを示した.これは最終目的の一つである木幅制限時の固定パラメータ容易性を示すために重要な研究ステップであり,これを得られたことは研究の進展が順調であることを示していると言える.実際,この結果を示すときに作ったアルゴリズムはある種の一般的なフレームワークを提供しており,木幅などのより一般的なパラメータへの適用が期待できる.また,関連する結果として,禁止部分グラフ族によって定義されるグラフクラスに対しても,計算量二分法を示すという大きな貢献ができた.この問題はグラフ同型性判定問題の研究において重要であるにも関わらず,これまでほとんど結果が知られていなかった.今回の結果で大きな道が開け,本研究の進む方向にもよい影響が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き木距離幅の研究を行い,「根連結」の条件を外した場合に対する固定パラメータ容易性を検討する.「根連結」の条件が使える場合には,グラフの木距離幅分解に対してある種のよい制限が加えられる.そのため,ある意味での代表分解の候補を効率的に列挙することができる.このため,グラフ同型性判定問題に対して固定パラメータ容易アルゴリズムを得ることができた.この条件を外した場合にも代表分解(もしくはその全ての候補)を効率的に発見する必要があり,ここが大きなチャレンジとなると予想している.別の方向性としては,今回得られた木幅に対する一般的なアルゴリズムの適用範囲をより深く調べることも今後の課題である.また,禁止部分グラフ族によって定義されるグラフクラスに対して得られた結果を慎重に検討し,そこから更に何が得られるか,そもそもこの結果が何を意味しているかをより明確にする必要がある.最終目的の一つである木幅に対しても徐々にアプローチを始め,木距離幅の研究で得た知見を活用できないか検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
根連結木距離幅が制限された場合のグラフ同型性判定問題に対する固定パラーメタ容易アルゴリズムに関する研究成果である国際会議論文の採択の遅れにより,当該国際会議への参加旅費が未執行となった. 研究は順調に進行しているため,次年度中に国際会議での成果発表旅費などに充当する.
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