研究課題
この年度では,ある一つの固定されたグラフを誘導マイナーとして含まないグラフクラスに対する同型性判定問題の研究を行った.結果として,計算量二分法を得た.以下に詳しく説明する.グラフの辺の縮約とは,その辺の両端点を同一視する操作である.あるグラフHが別のグラフGの「誘導マイナー」であるとは,Gに対して頂点削除と辺の縮約を繰り返してHに同型なグラフが得られることを言う.あるグラフクラスCが,禁止誘導マイナーHを持つとは,Cに含まれるどのグラフGもHを誘導マイナーとして持たないことを言う.本研究では,グラフクラスCがある定数サイズのHを禁止誘導マイナーとして持つ場合の,Cに対するグラフ同型性判定問題の計算量を調べた.結果として,以下の完全な計算量二分法を得た: 1. H が,完全グラフ,ジェム,ハウスのある変種のいずれかのグラフである場合は,多項式時間で解ける.2. H がそれ以外のグラフである場合はGI完全,つまり,一般の場合と同じ難しさである.証明は,Hを禁止誘導マイナーとして持つグラフの分類と特徴付けに基づくが,その分類・特徴付け自体,アルゴリズム理論的に非常に有用である.例えば,本結果の副産物として,クリーク幅と呼ばれるグラフの複雑度を示す値についても,その値がグラフクラス全体で定数であるかそれともいくらでも大きくなりえるかの特徴付けを与えた.グラフ同型性判定問題に対して,禁止構造による計算量の解析は今までにもいくつか行われてきた.例えば,あるグラフクラスが禁止マイナーHを持つ場合は,Hがどんなグラフでも多項式時間で解けることが知られている.禁止誘導マイナーに関してもある程度の研究が行われていたが,完全な計算量二分法は知られていなかった.今回の結果で,グラフ同型性判定問題と禁止構造に関する知見を深めることができた.
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 4件、 査読あり 10件、 謝辞記載あり 7件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件)
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