最終年度には、代謝ネットワークの修正の計算方法に関する解説論文を執筆した。この解説論文においては、最小反応カット問題を代謝流束モデル、基本モード、ブーリアンモデルで定式化する手法について解説した。またブーリアンモデルの代謝ネットワークの最小修正問題に対してNP完全性を証明し、整数線形計画法に基づく手法を開発、実装して微生物のデータに対して適用し、GIW2015で口頭発表した。 また研究期間全体においては、ブーリアンモデルの代謝ネットワークに対する最小反応追加問題(Minimum Reaction Insertion(MRI)問題)や、複数の代謝ネットワークに対する最小反応削除問題(Minimum Knockout for Multiple Network(MKMN)問題)を数理的に解析して、整数線形計画法に基づく手法を開発し、それぞれPlosOne誌とJournal of Computational Biology誌に掲載された。これらは研究目的に記載した代謝ネットワークの数理モデル化と解析、アルゴリズムの開発の部分に相当しており、研究計画は十分に達成された。 またブーリアンモデルの遺伝子制御ネットワークに関する研究として、与えられた定常状態に関する情報から、元の遺伝子制御ネットワークを推定したり、条件を満たすように最小の修正を加える問題の計算複雑さを解析して、IEICE誌に掲載された。また複数のブーリアンモデルの遺伝子制御ネットワークの制御手法を計算する整数線形計画法に基づく手法を開発し、BMC Systems Biology誌に掲載された。また木幅の制限されたAND/ORブーリアンネットワークの定常状態を計算する固定パラメータアルゴリズムを開発し、IEICEに掲載された。これらは研究目的に記載したブーリアンモデルの遺伝子制御ネットワークの定常状態を求めたり、制御したりする高速アルゴリズムの開発に相当し、研究計画は十分に達成された。
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