平成27年度は,平成26年度までに引き続き,反復丸め法を中心として連続計画緩和を利用するアルゴリズムの設計について研究を行った.
まず,平成26年度に得られた一般化ターミナルバックアップ問題に対する近似アルゴリズムの改良を試みた.この問題は,多項式時間アルゴリズムが存在するのか,それともNP困難と呼ばれる計算クラスに属するか分かっていないため,この点を明らかにすることが重要な未解決問題となっている.本研究では,一般化ターミナルバックアップ問題の特殊ケースであるマッチング問題に対するアルゴリズムの拡張を試み,部分的な成果は得られたが,まだ未解決問題を解決するには至らなかった.今後も引き続き研究を進めるつもりである.
また,新たな研究課題として,ユニットディスクグラフ上でのk連結m支配集合問題に対する新たな近似アルゴリズムの研究を行った.この問題に対するアルゴリズムは,無線アドホックネットワークを運用するときに用いられるバーチャルバックボーンの構築に役立つことが知られており,応用上重要な問題である.一方で,一般のグラフではk連結m支配集合問題には定数近似が存在しないことが知られている.本研究では,線形計画緩和を利用した主双対アルゴリズムを用いることで,ユニットディスクグラフ上でのk連結m支配集合問題に対する定数近似アルゴリズムを与えた.線形計画緩和の新たな応用として,理論的にも応用上も興味深い結果だと考えている.また,アルゴリズムを実装し,実用上も高い性能を発揮することを確認した.
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