研究課題
観測された高次元データに対して、有用な情報を抽出するための統計的モデリング手法を構築した。本研究では、下記の内容に関して論文を執筆し、論文誌に投稿中である。スパース正則化は、回帰モデルの係数パラメータにL1ノルムの制約を課した推定法で、制約の性質からモデル推定と変数選択を同時に行うことができる手法として、近年の統計科学の分野で最も多く利用されている手法の一つである。本研究では、関数データとして与えられた説明変数と、スカラーとして与えられた目的変数がいずれも多変量データのとき、これらの関係性を包括的にモデル化する関数多変量回帰モデルに対して、スパース正則化を適用することで説明変数を選択する方法について研究した。関数多変量回帰モデルでは、一つの説明変数に関連するパラメータが複数与えられるため、スパース正則化を用いて変数選択を行う場合、その制約の形状が重要となる。本研究では、その形状を構築するとともに、パラメータの推定量を導出するためのアルゴリズム、および推定されたモデルを評価するための基準を導出した。また、スパース正則化に関する最近の研究に、bi-level selectionとよばれる手法がある。これは、説明変数がいくつかのグループに分割される場合、説明変数を個々に、かつグループとして一括して選択するための方法であり、遺伝子データ解析などに応用されている。本研究では、近年提唱されている複数のbi-level selectionの手法に対して、予測精度および正しい変数を選択する精度を数値的に比較、検証した。
2: おおむね順調に進展している
関数多変量回帰モデルに対するスパース正則化に関しては、提案した推定法および評価法によって、既存手法に比べて,予測の観点や正しいモデルを選択するという観点から、既存の手法よりも優れた結果を得ることができた。この点から、本研究は順調に進展していると考えられる。提案手法を実際のデータに適用することでも、その効果を明確に示すことができた。一方で,関数多変量回帰モデルの推定量に対する理論評価を行いたかったが、この点は達成できなかった。また、bi-level selectionのための手法の数値比較に関しては、手法ごとの予測および変数選択の精度を様々な設定で比較することができた。しかし、bi-level selectionは特に近年多くの手法が提案されており、そのすべてを網羅することはできなかった。
関数多変量回帰モデルの理論評価を完成させる。推定パラメータの漸近分布や、推定量が一致性を持つための条件を導出することで、推定量の性質を理論面から検証する。今年度の研究で扱った関数回帰モデルでは、説明変数間の相互作用を考慮していなかった。しかし近年、変数間の相互作用の情報を取り入れたモデリングがいくつか報告されている。本研究でも、変数間の相互作用を考慮に入れたモデルを想定し、スパース正則化を適用することで、データに内在する必要な情報を明らかにする。また、関数データに対する多群判別問題に対してbi-level selectionを適用することで、関数データの変数だけでなく、判別境界も同時に選択できるようになる。今後の方針として、関数ロジスティック回帰モデルに対してbi-level selectionを行うための制約を構築し、モデルを推定するためのアルゴリズムと、推定されたモデルを評価するためのモデル評価基準を導出する。さらに、手法の有効性を、シミュレーションデータの解析を通して検証する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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