研究実績の概要 |
本研究の目的は,ソフトウェアシステムの開発において,近年定常化している開発後の要求変化に対しても,システムの動的かつ柔軟な更新を実現することである.具体的には,環境の変化に応じて構成や振舞いを自発的に変化させる自己適応システム(self-adaptive systems)に着目し,開発当初に考慮されていなかった要求変化に追随するための動的変更(動的進化)メカニズムを導入することで,システムリリース後の要求変化を許容する動的進化手法を確立し,同手法を支援するミドルウェアを提供することを目的としている.
平成26年度は各実施計画に従って以下を実施した. ■テーマ2(動的進化を実現する自己適応システム用ミドルウェアの構築):動的な変更を実現するためのミドルウェアの可能性を検討し,同ミドルウェアのベースとなるプロトタイプを構築した.プロトタイプとして,様々なユビキタスアプリケーションや組込み機器を対象とするために,Android OS上で動作するプロトタイプと,Mindstorm上で動作するプロトタイプの2種類を実装した. ■テーマ3(実証実験):テーマ1,2で検討・実装した分析手法とミドルウェアに基づき,複数ドメインにおいて実証実験を実施した.本実証実験では特に,環境変化が頻繁に発生すると考えられる組込みシステム上のソフトウェアに着目し,清掃ロボットとMindstormsを制御するソフトウェアを実装し,その動作を確認した.実験結果より,いずれのプロトタイプにおいても動的な動作変更が確認でき,またその際の変更箇所の記述が局所化できたことから,システムリリース後の要求変化に対しても動的進化が可能なミドルウェアが実現可能であることを確認できた.本成果をまとめた論文は,自己適応システムに関する最高峰の国際会議であるSASO2014のデモセッションにも採録された.
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