研究課題/領域番号 |
25730053
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
策力 木格 電気通信大学, 大学院情報システム学研究科, 助教 (90596230)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 車両アドホックネットワーク / 高度交通システム / マルチホッププロトコル / ファジィ論理 / 強化学習 |
研究概要 |
平成25年度には,車両アドホックネットワークを用いた事故・渋滞情報を周囲の車両に配布するためのマルチホッププロトコルを提案し,コンピュータシミュレーションを用いて提案手法の性能を評価した.提案プロトコルでは,ファジィ論理に基づき車両間距離,車両の移動,無線帯域,無線電波の伝搬特性を柔軟に考慮し情報を中継する,また強化学習を用いて全体最適な経路を定めることを特徴とする.コンピュータシミュレーションにより,さまざまなネットワークトポロジにおいて提案プロトコルの性能評価を行い,問題点を見つけて提案プロトコルを改良することを繰りした.シミュレータとしては,オープンソースネットワークシミュレータns-2.34を用いた.また無線電波伝搬モデルとしては,既存の高い評価のモデルであるNakagamiモデル(ns-2.34にて提供されている)を用いて,より現実的なフェージングを模擬した.車両移動モデルとして,SUMOとTraNSを利用した.また他の既存のプロトコルと比較しながら,提案プロトコルの改良を行った. ファジィ論理は人間の思考と似たような近似的な推論を扱うことができ,複雑なシステムを制御することが可能となる.強化学習は,現在の状態を観測し,一連の行動を通じて報酬が最も多く得られるような方策を学習できる.提案方式では,ファジィ論理を用いて無線リンクの品質を評価し,その評価値を強化学習コントローラで利用し,全体最適な経路を学習する.強化学習における状態観測は,Helloメッセージのやり取りで実現される.これにより,複雑なネットワークにおいて,自律分散的に最適な経路を見つけることができる.ファジィ論理と強化学習を組み合わせることで,さまざまな状況で安定した通信経路を自動的に選択することが可能になる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,車両アドホックネットワーク(VANET)を用いて事故・渋滞情報を周囲の車両に配布するためのマルチホッププロトコルを提案・評価することである.平成25年度には,当初の計画通り,ファジィ論理により利用可能帯域,移動状況,信号強度を統合化する,また強化学習を用いて全体的に最適な経路を決定することで安定かつ効率的な通信を可能にする方式を提案した.コンピュータシミュレーションを用いて,他の既存研究と比較しながら,提案プロトコルの評価を行った.またファジィ論理に用いたファジィルール,メンバシップ関数,設定パラメータを強化学習で自動調整する方式を提案した.より現実的な無線電波伝搬モデル,車両移動モデルを用いて,提案プロトコルの評価と改善を行った.現実的なコンピュータシミュレーションにより提案手法の有効性を示した.さらに研究成果を論文誌(1件),国際会議(4件),国内大会・研究会(3件)に発表した.そのために,研究が当初の計画通り進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には,実ネットワーク環境にて提案プロトコルの性能を評価し,提案プロトコルの改良を行う.提案プロトコルを実無線デバイスにて実装して,実無線環境での提案プロトコルの動作を確認する.さらに無線装置を車に搭載させることにより,実車両アドホックネットワークにおける動作確認をする.具体的には,USRP2とGNU Radioを利用してプロトコルの実装を行う.ここで,USRP2は汎用信号処理オープンハードウェアである.GNU RadioはUSRP2の無線通信方式を切り替えることを可能にするソフトウェア開発ツールキットである.USRP2とGNU Radioを利用することにより,無線通信方式を物理層まで変更することができる.USRP2とGNU Radioを連携させることにより,提案プロトコルを実無線環境にて評価しながら,実環境における各層で連携することによる最適な通信方式を見つけることを目標とする.効果的に研究を進めるため,またはコストを削減するために,まず車なしで実無線ネットワークを構築して,提案プロトコルの評価と改良を十分行う.その次第,車両に無線装置(USRP2)を搭載させ,車両アドホックネットワークにて実証検証を行う. 平成27年度には,提案プロトコルとINTERNETプロトコルの接続を可能にして,実際の音声,ビデオなどのアプリケーションを用いて提案プロトコルを評価する.また経路選択が上位レイヤにおける影響を明らかにする.具体的には,経路変更がTCPの輻輳制御に関する影響,ホップ数がTCP性能に対する影響,経路上のノードのチャンネル競争がTCPスループットに対する影響などを明らかにする.その次,エンド・ツー・エンドのスループットを考慮した全体最適な経路を決定する.
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次年度の研究費の使用計画 |
残り3,108円が必要としている備品(タワーサーバ)の購入に足りなかったため,次の年度の助成金と合わせて利用したい. 次の年度の助成金と合わせて備品の購入に利用したい.
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