本研究では,地形の影響を受けず自由に移動できる飛行体を利用した蓄積運搬型転送技術の確立を目的としている.平成27年度は,飛行体DTNの運用管理に必要となる「1.フィールド上の障害を考慮した飛行経路の制御技術」,「2.長距離無線を活用した飛行体DTNの運用管理技術」の研究開発を行った. 1.について,飛行体は地形の影響は受けないものの、局的な災害(強風など)や攻撃者による攻撃により移動が阻害され、蓄積運搬型転送による通信性能が大きく悪化する能性がある。そこで本研究では、特別なセンサを用いなくてもフィールド上で発生する攻撃や災害を検知できるように、蓄積運搬型転送の通信性能(ホップ数、通信遅延など)の時系列データを解析して移動体が正しく稼働しているか検知する方法について、システムの試作とシミュレーション実験の両面で検討を行った。まず、小規模なスペースを移動する移動体にZigbeeによる無線通信機能を実装し、移動体間のホップ数を計測するシステムを試作した。このシステムでは、計測されるホップ数の時間的変化を解析し、他の移動体とのホップ数が時間とともに変化する場合、移動体は正しく稼働していると判断する。さらに、DTNによる通信性能を評価できるシミュレータを用いて、より広大なフィールドを対象として飛行体の稼働状態を検知する方法を検討している。 2.について, 429MHz帯の長距離無線通信の通信モジュールを、市販の飛行体であるAR Droneに増設した。これにより、飛行体同士および飛行体と基地局の間の長距離通信が可能となり、少数の飛行体により大規模なフィールドを対象とした飛行体DTNシステムを実現できる。さらに、消費電力の少ないセンサノードのような端末との通信が可能となるように、Bluetooth Low Energyによる通信に対応したDTNシステムの検討・試作を行った。
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