研究課題/領域番号 |
25730056
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
梶 克彦 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40466412)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 屋内位置推定 / 行動認識 / 無線LAN / 歩行者デッドレコニング |
研究概要 |
本研究で提案するのは,デッドレコニングの誤差を無線LANによって自動修正する手法である.本年度は,その前提となるデッドレコニングアルゴリズムの基礎部分を実装した. また,その評価用コーパスとして利用可能な,②屋内歩行センシングコーパスを整備した.さらに,高精度屋内位置推定に基づいて実現できる応用の一つとして,③建物構造推定手法の検討を行った. ①現状のデッドレコニング手法では,事前に無線LAN電波と地磁気の環境マップを用意しておいた状態を前提としている.加速度・地磁気・角速度センサをカルマンフィルタによって統合し,姿勢推定の後進行方向と速度を推定する.それを環境マップの情報と組み合わせ,尤度の高くなる地点を現在位置として推定する.(ASN研究会学生奨励賞) ②従来の多くの屋内位置推定研究では,研究者各自が評価用データを収集して,そのデータに基づいて評価を行っていた.しかし,他研究との比較検討が困難であるという問題があり,研究の発展の妨げとなっていた.我々は,自身の屋内位置推定精度を評価するという目的意識に加え,本研究分野の発展を促進させるために,他の研究者にとっても利用可能な評価用データセット(HASC-IPSC)を用意した.被験者総数は107名,延べ経路データ数は452個である.(第70回MBL研究会優秀論文賞) ③高精度な屋内位置推定が実現された際に可能となる応用の一つとして,多人数の歩行データから屋内構造(歩行空間ネットワーク構造)を推定する手法を提案した.本手法では,複数経路データの間で,歩行時の右左折や歩行距離,無線LAN環境といったパターンが部分的に一致する箇所を検出し,ボトムアップに歩行経路データ同士を統合していく. (DICOMO2013優秀論文賞,優秀プレゼンテーション賞)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
①デッドレコニングアルゴリズムの基礎部分,②屋内歩行センシングコーパスの整備,③屋内構造推定手法について,それぞれ国内研究会から高い評価を受けており,個別の提案手法やコーパスは高い水準の新規性・有用性を達成できていると判断できる. ①:ASN研究会学生奨励賞受賞,②:第70回MBL研究会優秀論文賞,③:DICOMO2013優秀論文賞,優秀プレゼンテーション賞. ただし,当初実現を予定していた,無線LAN環境特異点に基づくデッドレコニングの累積誤差修正手法については,顕著な成果が上がらなかった.想定していた手法は,ゲート通過時に生じる無線LAN環境の急激な変化を捉え,そのパターンが一致する場合に同一箇所を通過したものとみなし,それを手がかりとしてデッドレコニングの誤差を修正するというものである.しかし,実環境では,無線LAN環境の急激な変化を安定的に捉えることが困難であることがわかった.一方,デッドレコニングの誤差修正のもう一つの手がかりである同一地点の停留については,安定的に検出できることが分かった.
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの達成度」でも述べたように,実環境では同一ゲート通過を安定的に検出することが判明した.そこで,もう一つの手がかりである,同一地点の停留を重点的に利用した デッドレコニングの誤差修正手法を実現する. また,現状の屋内位置推定が前提としている無線LAN+地磁気の環境マップは,自動で構築されるように拡張する.
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