研究課題/領域番号 |
25730056
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
梶 克彦 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40466412)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歩行車デッドレコニング / 行動認識 / 屋内位置推定 |
研究実績の概要 |
本研究で提案するのは屋内における歩行者デッドレコニングの誤差を無線LANによって修正する手法である.本年度は昨年度に引き続き,その前提となる歩行者デッドレコニングの精度向上に取り組んだ. 一般的に人は合理的に行動するため,安定歩行時には直線的な軌跡をたどると考えられる.また屋内の通路の多くは直線的である.よって,混雑した通路や複雑な形状の建物の歩行を除けば,移動の大半は直線的な歩行とみなせる.そこで,右左折や蛇行を伴わない歩行が一定時間以上安定してセンシングできている区間を安定歩行区間と定義し,それに基づいて歩行軌跡を推定する手法を提案した.安定歩行区間の検出には角速度を用いる.検出された安定歩行区間を直線的な歩行とみなし,角速度に乗っているオフセット値を求め,ドリフトを除去する.また,多くの通路の曲がり角の角度が90 度であるという建物知識を導入し,安定歩行区間同士が平行または垂直になるように歩行軌跡を修正する.さらに,安定歩行区間が一定以上の割合となる歩行センシングデータを,高精度の歩行軌跡推定が期待できる信頼性の高いデータみなす.(第44回ユビキタスコンピューティングシステム研究会 優秀論文賞) 同様に,気圧変化量の少ない区間は同一フロアに存在しているとみなしてフロア間移動を行っている区間を高精度に推定する手法を提案した. これらの手法について,前年度までに構築した屋内歩行センシングコーパスHASC-IPSCを用いて精度評価を行い,有効性を確認した. 上記の提案手法に加え,加速度センサによる水平方向の移動量推定,気圧センサによる高さ方向の移動量推定を組み合わせ,高精度な三次元歩行軌跡推定を実現した.最終的な3 次元歩行軌跡推定の誤差蓄積速度は,10 秒間の移動の間に1m の誤差が蓄積する程度であることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目標は,屋内における歩行者デッドレコニングの誤差を無線LANによって修正する手法である.本年度は無線LANによる位置補正という根幹部分に手を付けるに至らなかったが,その前提となる歩行者デッドレコニングの精度を大幅に向上させることに成功した. また,これまで高さ方向の移動推定には加速度センサを使用していたが, 気圧センサの利用によって大幅に推定精度が向上し,高精度な三次元歩行軌跡の取得に成功した. 提案手法の一部は第44回ユビキタスコンピューティングシステム研究会において優秀論文賞を受賞した.また,前年度までに構築した屋内歩行センシングコーパスに関する研究で情報処理学会山下記念研究賞を受賞した.一連の研究は学術的に高い評価を得ている.
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今後の研究の推進方策 |
歩行者デッドレコニングの歩行軌跡推定に関してはほぼ十分な精度が達成できた. 今後は絶対的な位置を推定可能な手法を組み合わせ,歩行者デッドレコニングの累積誤差を随時補正できる手法を実現する. 提案当初は絶対位置推定の手がかりとして無線LANを用いることを想定していたが,これまでの研究で磁気情報の利用も有効であることが確認された.また,iBeaconに代表されるBLEを用いたビーコンが非常に安価に入手可能になった. これらの現状を踏まえ,絶対位置推定の部分については,無線LAN,磁気,BLEビーコンの併用によって実現する予定である.
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