本研究では,3G/4Gエリアで閲覧されることが予想されるWeb上のコンテンツを,ユーザのWi-Fiエリア滞在中にあらかじめプリフェッチしておくことで,本来なら3G/4Gへ流れるトラフィックをWi-Fiネットワーク側へオフロードする方式を提案した.本年度は,(1) 昨年度考案した方式を発展させるとともに,(2) 公開データ(モバイル端末のユーザの端末利用履歴)を用いて提案手法の詳細な評価を行った.
(1) について,大きく次の点で方式の改良を行った.一点目として,利用可能バッテリ量の制約のもとでオフロードを達成するための方法について,プリフェッチを行った結果,そのコンテンツがユーザに閲覧された(キャッシュヒットした)場合にはその後もプリフェッチを積極的に行い,閲覧されなかった場合はプリフェッチに使用されるバッテリ量を節約する,という方法を考案した.これにより,利用可能バッテリ量をシステムの動作中の実績に基づき都度決定することが可能となり,バッテリ量をより効果的に利用できるようになった.二点目として,プリフェッチを行うタイミングについて,将来コンテンツが消費される時刻の予測を行うことで,プリフェッチしても閲覧されないコンテンツが生じる確率を減らし,プリフェッチに利用するバッテリ量当たりのオフロード量の向上を行った.
(2) について,米Rice大学の研究グループによって公開されている,複数の実験参加者によるiPhoneの利用履歴のデータ(LiveLabトレース)を用いて,提案手法の評価を行った.その結果,提案手法が比較手法と大差ないオフロード量を達成しながら,比較手法よりも消費バッテリ量を節約可能なことを確認した.
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