本研究では数値シミュレーション結果の可視化部を技術的に大幅に向上させることを目的とし,液体などの明確な境界を持つ流体のシミュレーションを対象として,流体の詳細な特徴を捉えた表面抽出・追跡手法を開発する.さらにこの取り組みを通じて数値シミュレーションの適用可能な領域を大きく広げることを目的とする. 最終年度は2年目に問題となった表面の滑らかさを解決するために,ベースとなる粒子法シミュレーションにおける粒子の均一な配置を実現する手法を発展させた.手法自体のアイデアは2年目に立てたものであるが,その際は平面か陰関数曲面で表された単純な境界形状しか扱えなかったものを,コンピュータグラフィックス分野で一般的に用いられている3次元表現手法であるポリゴン表現にも対応できるアルゴリズムを開発することで拡張した.その成果は国際会議でフルペーパーとして採択され(採択率21%),その予稿集はComputer Graphics Forumという英文ジャーナルに特集号として掲載された. 研究期間全体としては目標であった少ない粒子での陰関数曲面フィッティングを用いた表面生成法を2次元だけでなく3次元のシーンにおいてもスクリーン空間を用いることで実現し,さらにより高精細な表面を得るためにベースとなる粒子法そのものの改良まで行えたことは,当初の目的であった数値シミュレーションの適用可能な領域を大きく広げることを少なからず達成できたのではないかと考えられる.
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