データ同士の演算が必要なデータ認証プロトコルにおいては,認証子同士の演算を可能にする準同型認証子が重要な暗号要素技術となっている.特にクラウドシステムにおける効率的なデータ認証プロトコルを構築する際,データの変更に伴って認証子も変更する必要があるため,準同型認証子は非常に有効である.本研究では,具体的なクラウドシステムモデルを想定し,準同型認証子による現実的で効率の良いデータ認証手法(研究課題1),及び準同型認証子によるデータ認証手法の応用(研究課題2)の研究を3年間取り組んできた.その結果,研究成果として雑誌論文5本及び国際会議論文5本が公表された. 平成25年度は,具体的なクラウドシステムモデルを定義し,ネットワーク符号及び準同型認証子を用ることでデータ修復を効率的に可能とするデータ認証手法を提案した(雑誌論文1本,国際会議論文1本).平成26年度は,秘密鍵が異なる複数のクラウド利用者にも対応できる新たな準同型認証子を構築した(雑誌論文1本,国際会議論文1本).これは,秘密鍵が異なる複数の利用者に対応できるだけでなく,データ修復時における新たな機能である「direct repair」を初めて実現した.データ修復の際,通常の認証子では認証子の再計算が必要になるが,提案方式では認証子の再計算が不要となり認証子のままで「direct repair」が可能となる.平成27年度は,構築した新たな準同型認証子をセキュアクラウドシステムに応用した(雑誌論文1本,国際会議論文3本).具体的には,提案した準同型認証子をうまく適用することによってデータの直接修復かつ動的処理を可能とするより現実的なセキュアクラウドシステム,及び提案した準同型認証子を用いたデータの公平な売買システムを提案した.さらに,センサネットワークや匿名通信におけるデータ認証手法に関する研究も実施した(雑誌論文2本).
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