本研究では画像検索技術と暗号技術の統合により、犯罪者の顔画像の検索性と善良な市民のプライバシーの保護性を両立する顔画像の蓄積及び検索機構の構築を目指す。そのために、(1)顔画像からの適切な識別符号の生成法、(2)識別符号に基づく検索正当性の確認手続きを備えた暗号化処理及び復号処理法の二点の実現方法を明らかにし、この組み合わせにより提案機構を構築する。本年度は、研究目標(1)「顔画像からの適切な識別符号の生成法」に関し、前年度に検証した識別符号による顔画像一致判定の誤陽性と誤陰性に着目し、人間の目視による識別結果との違いと人間の誤識別への許容度に関する主観評価実験を行い、提案手法の処理結果の社会的受容に関する評価を示した。また、研究目標(2)「検索正当性の確認手続きを備えた暗号化処理及び復号処理法」に関し、(1)の識別符号の生成処理と合わせて実計算機上で実装を行い、通常計算コストの係る処理である暗号化処理に加え、識別符号の生成処理が同時に行われても実時間処理が可能であることを示した。上記の(1)(2)で得られた成果の組み合わせにより、提案する技術の顔画像の蓄積及び検索機構の基盤的なシステムの構築を行い、実環境を想定した画像処理の結果を用いた客観的・主観的評価を行うことができた。これにより、顔画像検索におけるプライバシー保護と社会的利便性の両立についての知見を得、目標とする顔画像の蓄積及び検索機構の構築を行った。
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