研究課題
空港間の航空路管制を司る航空管制官は通常二人一組のチームで協力しており、適切なオペレーション及びチームワークのためには、自身の状況認識だけではなく、パートナーの状況認識も正確に把握しておくこと、すなわちチーム状況認識が重要である。本研究は、現場で使用可能な、彼らのチーム状況認識の評価手法の開発とその適用を目的としている。初年度に、チームワークやパフォーマンスについての評価項目の作成と、チーム状況認識の評価のためのチーム行動記述の記録シートの開発を対象領域の専門家と行い、それらを基に行動記述データの収集を行った。行動の記述記録は航空管制の資格者が管制官の背後に座り、行った。1セッションを15~20分とし、データは約60セッション分収集された。本年度では、収集された行動観察記述データを用いたチーム状況認識の評価手法の妥当性及び信頼性の確認を行った。開発手法ではチーム状況認識を5段階(1から5)に分け、スコアとし、それぞれについて行動マーカーを定義することでチーム状況認識の評価を試みた。評価者間信頼性を評価するため、航空管制の知識を持った2名の評価者が独立して評価手法の基準に基づき、チーム状況認識のスコアを与え、その一致率を統計的に検討した。その結果、評価者間信頼性は認められた。また、妥当性の検証として、各セッションの終わりに評価したチームワークの評価結果と、そのセッションのチーム状況認識のスコアの平均値の相関を分析した。その結果、項目の一部と相関が見られ、妥当性が示唆された。また、妥当性や信頼性の向上方法について考察した。現場で使用可能な航空管制官のチーム状況認識の評価手法は未だ確立されていない現状で、現場データを用い、妥当性と信頼性の評価を行った手法を提案したことは意義がある。チーム状況認識の評価は他の領域でも重要であり、今後の応用が望まれる。
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