研究課題
若手研究(B)
本研究は,感情情報に対する注意資源が感情価(ポジティブ/ネガティブ)により規定されている可能性を,実験心理学的手法と脳イメージング手法を駆使することで明らかにすることを目的としている。平成25年度は,実験心理学的手法を主に用いて,感情情報に対する注意の資源特性の検討を進めた。実験では,ワーキングメモリ課題と感情ストループ課題が同時に課され,ワーキングメモリで保持する記憶アイテムの感情価(ポジティブ/ネガティブ)と感情ストループ課題の感情価(ポジティブ/ネガティブ)の組み合わせを操作することで,上記仮説の検討をおこなった。ネガティブなワーキングメモリ負荷の影響を検討する実験では,負荷の程度を操作し,高負荷,低負荷,そして負荷無し条件を設定し,感情ストループ課題に与える影響を調べた。その結果,高負荷条件と負荷無し条件において,感情ストループ課題に与える影響が異なることが判明した。具体的には,負荷無し条件では,ネガティブストループ課題の反応時間が,ポジティブストループ課題の反応時間よりも長いのに対し,高ネガティブ負荷条件では,両者に差は認められなかった。本研究結果は,ネガティブな感情負荷が与えられると,それ以上のネガティブ感情価を付帯する情報が処理されなくなることを示すものであり,感情価ベースの注意資源仮説を支持するものである。一方で,ポジティブな感情ワーキングメモリ負荷を操作した実験では,感情負荷に伴う感情ストループ課題の成績の変化は認められなかった。これは,本実験の操作では,十分に感情の注意資源を消費できていないことが原因である可能性があるため,実験の手続きを改善することで,問題の解決に取り組む。ネガティブ感情負荷実験において,想定の結果が得られたため,fMRI実験にも着手し,感情ストループ効果と関連する前部帯状回や前頭前野を対象とした脳活動の分析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
実験心理学手法を用いた実験では,ネガティブな感情価操作をおこなった実験において仮説を支持する実験が得られた。また,この結果をもとにfMRI実験に着手し,データ収集を進めているという点では,予想以上に研究が進んでいると言える。しかしながら,ポジティブな感情操作をおこなった実験では,十部な結果が得られておらず,こちらは今後改善の必要がある。このような状況を総合し,現在までの達成度を「おおむね順調に進展としている」と評価した。
ネガティブな感情負荷研究に関しては,引き続きfMRIデータの収集を進め,また,皮膚電位や心拍といった他の生理学的指標も踏まえながら,仮説の詳細な検討を進める。ポジティブな感情負荷研究では,現在使用している画像刺激ではなく,より快情動を導く画像刺激あるとはその他のモダリティに訴えかける刺激を使用することで問題の解決に取り組む。
MRI装置の過剰な予約率により,実施を予定していたfMRI実験を断念せざるを得なかった。MRI装置の使用予約率が低い時期に速やかにデータ取得をおこなうことで,本問題の解決に取り組む。
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PLOS ONE
巻: 9 ページ: 1-11
10.1371/journal.pone.008603