研究課題
本研究課題は,生存と密接に関わる感情価を伴う情報が,容量制約をもつ注意資源の下でどのように処理されているのかを明らかにすることを目標に掲げていた。特に,感情の次元モデル(Russell JA 1980; Lang PJ et al. 1993)に着目し,注意資源が,感情価ベースごとに備わっている可能性を検討した。つまり,注意資源が,ポジティブな情報とネガティブな情報とで独立して備わっている可能性を追求したのである。この仮説を実験的に検証するために,心理学分野で実績のある二重課題法を使用した。具体的には,それぞれの感情価を持つ情報を処理するための注意資源を,ワーキングメモリ課題を用いて枯渇させ,そのときの感情ストループ課題に対する影響を検討したのである。もし,感情価ごとに注意資源が備わっているのであれば,ポジティブなワーキングメモリ負荷では,ポジティブ情報に対する注意資源が枯渇しているため,ポジティブ感情を伴うストループ課題の干渉効果が弱まり,ネガティブなワーキングメモリ負荷では,逆の結果が得られるはずである。感情ストループ干渉が生じているときには,前部帯状回腹側部(ventral part of the anterior cingulate cortex; vACC)の活動が増加することが知られているため(Bush et al., 2000),本研究では,vACCの活動をfMRIを用いて計測することで,仮説の妥当性を検証した。2つのfMRI実験の結果,感情価に関わらず,感情のワーキングメモリ負荷が高まると,感情ストループ課題遂行時のvACCの活動が低下することが明らかになった。本研究の結果は,注意が向けられた感情情報は,感情価の方向性が取り除かれ,強さのみが残された状態で表現されていることを示すものである。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Cortex
巻: 71 ページ: 277-290
10.1016/j.cortex.2015.07.025.
Frontiers in Psychology
巻: 6 ページ: 1811
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http://www001.upp.so-net.ne.jp/t-minamoto/index.html