研究課題
1999年にWhiten教授らにより、チンパンジーの行動の地域差がNature誌に発表されて以来(Cultures in chimpanzees, 1999, Nature)、動物にも文化と呼べる行動の地域差があることは、コンセンサスとなった。一方で、行動が集団内に伝播するメカニズムについては、驚くほど分かっていない。サルは「模倣」できない。そのため、サルの文化的行動は、低次の観察学習の過程(社会的促進・局所的増強)が貢献していることは分かっている。しかし、新規の行動の何が・いつ・どこで・誰から・どのように、伝わるかは依然ブラックボックスのままである。また、近年の研究によれば、動物における観察学習の成否は模倣のような高次な過程を必要とするよりも、情動の伝染などといった従来とは異なった観点での議論が増えている。さらに、個体ベースでの学習過程でも学習がスムーズに進むような社会的刺激の存在や、それを引き出すための運動動作の基盤が存在することが認識されつつあった。本研究では、ヒト以外の霊長類で、観察学習が進むプロセスと、観察学習が引き起こしやすい行動学的な要因について、明らかにすることを目的とした。取り組みの結果、主に4つの成果をまとめた。1)捕食者学習における認知機構、2)養育行動をベースとした母子間の社会学習の基盤となる認知機能、3)音声コミュニケーションにおける発声学習の根幹にある情動情報のやり取りについての実験的知見、4)集団ベースとした系列操作運動の伝播効率に関する研究、である。これらの研究やそれに派生した研究をまとめ、前年度から合わせて合計6編の論文としてまとめ、積極的に成果を発信した。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
日本音響学会誌
巻: 未定 ページ: 未定
Primates
巻: 55 ページ: 13-17
10.1007/s10329-013-0390-2
霊長類研究
巻: 30 ページ: 121-136