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2013 年度 実施状況報告書

心理療法のセラピストの熟達に関する認知科学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 25730094
研究種目

若手研究(B)

研究機関追手門学院大学

研究代表者

長岡 千賀  追手門学院大学, 経営学部, 准教授 (00609779)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード熟達 / セラピスト / 認知科学 / 言葉がけ / 記憶
研究概要

本研究の目的は、セラピーを施行するセラピストの認知プロセス、すなわち、他者の話を聞いてその人を理解し、その人の問題解決に向けて相互作用することが、臨床の経験年数によって如何に変化するかについて、認知科学的アプローチを用いて、実証的に明らかにすることである。
平成25年度は、まず、クライエント情報の体制化の仕方に関する検討を行なった。実験では、セラピーの様子を写したビデオを実験参加者に提示し、ビデオの終了後に、クライエントが語った内容を覚えているだけ全て書き出してもらった。実験参加者は、経験年数が異なる複数のセラピスト、臨床の知識を全く持たない一般人であった。書きだされたものを量的、質的に分析した結果、実験参加者の経験年数による、量的、質的な相違が明らかになった。
また、セラピー場面のクライエントの語りを量的に捉え、経験豊富なセラピストと一般人の相違について理解を深める試みも行なった。これは、上記検討結果をより深く考察するための一助となると考えている。クライエントにどの程度、どのように語る時間を与えるかが、経験豊富なセラピストと一般人との間で異なっていることが示された。加えて、セラピー場面のセラピストの言葉がけを分類し、経験豊富なセラピストと経験の少ないセラピストの間に質的違いがあることを示した。
これらの検討は、従来の、セラピストの経験豊富なセラピストによる個人的体験に基づく定性的記述を用いた研究と異なっており、さらに定量的分析や実験、教育効果の検証を進めることにより、本研究は、認知科学における新しい熟達化理論の構築をもたらすと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定では、クライエント情報の体制化の仕方に関する検討に続いて、問題解決に向けた分析の仕方に関する検討を行う予定であった。
実際、平成25年度には、(1)クライエント情報の体制化の仕方に関する検討を行い、一定の研究成果を得、今後の検討課題をより明確にすることができた。かつ、明らかになった検討課題に基づき、(2)セラピー場面のクライエントの発話長を定量化した結果、臨床経験の有無によって問題解決の方向性が異なることを示唆するデータを得た。これにより、今後焦点を移そうとしている「問題解決」について再考し、研究上の操作的定義を明確にする上での大きな手がかりを得た。
さらには、(3)セラピストのクラエイントへの言葉がけの分析を行い、セラピストが如何にしてクライエントの感覚世界を追体験しているか等について考察する手がかりとなるデータを得ることができた。今後の本研究の効果的な遂行に関わる手がかりを得たと考えています。
以上から、概ね順調に進んでいると判断している。

今後の研究の推進方策

平成25年の検討では、セラピストの発話の内容を分析する手法を作成することを試みた。セラピストの発話内容をある観点を切り口として分類することにより、セラピストの認知プロセスにより直接アプローチできる可能性が高まったと考えている。
このため、今後、現在作りつつある発話内容の分析手法を改善し、更にサンプル数を増やして検討を行うことを計画している。このとき、子どもへの作業療法を主な題材とする。心理療法が非常に大切にしていて、かつ本研究の焦点である2点、すなわち、セラピストが、クライエントの感覚世界を追体験すること、ならびに、言葉や音声のやりとりによってクライエントが変化するきっかけを提供することを、作業療法は心理療法と同様に非常に大切にしている。作業療法では、上記の点が心理臨床のセラピーにおけるよりも抽出しやすく、かつ、心理臨床場面に比べてデータ収集が容易であるため、より効果的な研究遂行の助けとなると考えている。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] A comparison of experienced counsellors, novice counsellors and non-counsellors in memory of client-presented information during therapeutic interviews2013

    • 著者名/発表者名
      Nagaoka, C., Yoshikawa, S., Kuwabara, T., Oyama, Y., Watabe, M., Hatanaka, C., & Komori, M.
    • 雑誌名

      Psychologia: An International Journal of Psychological Sciences

      巻: 56 ページ: 154-165

    • DOI

      10.2117/psysoc.2013.154

    • 査読あり
  • [学会発表] 対人関係再考2013

    • 著者名/発表者名
      長岡千賀
    • 学会等名
      日本LD学会第22回大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      20131012-20131014
  • [学会発表] 臨床につながる心理学研究とは:socialすなわちコミュニケーション行動からつながる2013

    • 著者名/発表者名
      長岡千賀
    • 学会等名
      日本心理学会第77回大会 企画シンポジウム「臨床につながる心理学研究とは」
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      20130919-20130921
    • 招待講演
  • [学会発表] 発達障害児への作業療法におけるセラピストの専門的技法(2)―セラピストの言葉がけを指標とした検討―2013

    • 著者名/発表者名
      長岡千賀
    • 学会等名
      日本心理学会第77回大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      20130919-20130921
  • [学会発表] Implication of silence in a Japanese psychotherapy context: a preliminary study using comparison with everyday advice session2013

    • 著者名/発表者名
      Nagaoka, C., Kuwabara, T., Watabe, M., Yoshikawa, S.,Komori, M., Oyama, Y., Hatanaka, C.
    • 学会等名
      the 9th International Conference on Cognitive Science (ICCS 2013)
    • 発表場所
      Hilton Kuching
    • 年月日
      20130827-20130830
  • [学会発表] 自閉症児への作業療法におけるセラピストの専門的技法に関する予備的検討2013

    • 著者名/発表者名
      長岡千賀
    • 学会等名
      日本教育心理学会第55回総会
    • 発表場所
      法政大学
    • 年月日
      20130817-20130819

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公開日: 2015-05-28  

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